いつものように、VIPの転載ブログを流し読みをしていたら、ディスプレイの裏の壁の一部がパコっと外れて、おっさんが覗いていた。「やべっwww」と言って、おっさんは、ぴょっと隠れた。暫しの沈黙。
流石に、無視をする訳にもいかないので、空いた壁の穴を覗いてみた。そしたら、また、おっさんが「ちょwww」とか言った。壁の中は、畳一畳くらいの個室になっていて、おっさんが一人、パソコンの前に座っていた。パソコンは俺のと同じ機種?
おっさんは、頭にタオルを巻き、しけもくをくわえている。マンガのキャラクタ-で言えばハメ字郎に似ている。ダラダラ汗を書きながら、キーボードを叩いている。「ちょと待ってな。追いつかねえwww」とか言っている。
何を言っているのか。ふと横を見ると、おっさんのいる部屋は、両端が鏡張りになっているのか、同じパソコンの前に座るおっさんが、ずらーっと無限に並んでいた。子どもの頃怖かったな。ずーっと向こうには違う人がいるのじゃないかと思った。
「うし完了www」そう言って、おっさんはエンターキーを押したようだ。カリカリという音が部屋に響く。カリカリ…。カリカリカリ…。「おまっとさんwww」と言って、おっさんはこちらの部屋に顔をぐいと出してきた。タバコ臭い。
「それ取ってくんねwww」。こちらの側に落ちていた壁の一部を指さす。渡す。「じゃwww」と言って、おっさんは、壁の中に戻った。そして、壁をパコっと元に戻した。その時、気がついた。この部屋白かったのか。
ふと、「僕はいったい何者か?」とか「僕はどこか来たのか?」とか「僕はどこに向かうのか?」とかという哲学的な問いかけが襲いかかってきたが、振り切るようにディスプレイを見つめた。転載ブログが更新されていた。
AUTHOR: yarukimedesu
STATUS: Publish CATEGORY: 小説
DATE: 08/16/2008
私がネットに投げはなった最初期の小説の一つ。パソコンの中の出来事は、インターネットを通じた誰かのリアクションの集合体と思いきや、壁の中にいるおっさんが一人で演じていたモノじゃないか?という話。
2008年には、スマホとかなかった。ガラケーはあった。今、同じ着想で物語を書いたら、どんなことになるだろうか。