逃げ上手の若君(松井優征)。
松井優征氏、本人曰く、一度もテコ入れをしたことないらしい。テコ入れとは、読者人気、アンケート票の上昇を狙った展開やシーンを行うことです。
これまでの連載作品。魔人探偵脳噛ネウロ、暗殺教室も当初考えていた最長のエピソードで終わったそうです。つなり、人気が出たから延長したということもないらしい。
ヒット作を狙って出せる天才秀才漫画家。
漫画家・松井優征が語られる時に、その企画力、マーケティング力、分析力が挙げられます。
魔人探偵脳噛ネウロでは、推理漫画に魔人や魔界の設定を足すことで、推理モンっぽいエンターテイメント作品になってます。
暗殺教室は、ジャンプでテーマとなることが少なかった「勉強」や「受験」を題材として、そこにバトルの中でメインとなることが少なかった「暗殺」を加えて、SFも交えて、こらまでなかった漫画が生み出されたと思います。
暗殺教室の後には、ぼくたちは勉強ができない、Dr.ストーンと「勉強」がテーマとなった作品が続きました。ジャンプの中に「勉強」というジャンルを打ち立てました。
歴史モノの新機軸。
前置きが長くなりましたが、『逃げ上手の若君』は、北条時行を主人公とした歴史モンの漫画です。ジャンプで歴史モンの漫画と言えば、影武者徳川家康とか、花の慶次などが思い浮かびます。
『逃げ上手』が画期的だったのは、織田信長や豊臣秀吉など、多くの人が知っている武将じゃあなくて、マイナーな武将を主人公としたことで、本編の中でも「教科書にほとんど登場しない」と紹介していて、読者が知らないことが前提になっています。これにより、歴史知識が少なくても、読むハードルは下がっています。
また、織田信長などに比べると、圧倒的に知らないことが多いので、読むほどに「知る」喜びがあると思います。
神力、足利尊氏の描き方。
歴史モンの漫画は、史実という縛りがあるので、妖術や魔法などのファンタジーを描きにくいですが、逃げ上手では『神力』という概念を取り入れて、神秘的な現象を描いています。物語の宿敵となる足利尊氏も、その神力が溢れる武将として描かれてます。
また、太平記の中の足利尊氏に関する記述は、荒唐無稽な部分があるようですが、それをそのままの解釈で描いているのも特色のようです。理解不能な部分、異常なまでのカリスマなどを神秘として表現していると思います。
多分、信長が神力とか使いだしたら、漫画のジャンルが変わりますが、逃げ上手は当初から神力ありきで進行してました。
最終回の予想。
私は、ネタバレ回避のために歴史や武将のことは調べないで読んでます。物語の途中で死亡した武将のことは、ちょっとだけ調べたりします。
足利尊氏の最期が最終回となり、後醍醐天皇が島流しになるあたりがクライマックスになると思います。
太平記などの歴史書の通りになると思いますが、その時代に起きたことに関する作者の独自の解釈や、様々な学説が紹介されるのじゃないか?と。
大河ドラマ化はよ。
アニメ化はするようですが、NHKの大河ドラマで北条時行が選ばれたら、松井優征の伝説が、さらに確固たるモノになるでしょう。
調べてみると、足利尊氏を主人公にした「太平記」は、大河ドラマになっているようです。さすれば、北条時行は敵として登場していたのでしょうか(ウィキペディアによると名前だけ出てくるようです)。
漫画を読んでいると、こんなに面白いのに、なんで、北条時行の取り扱いが少ないんだ!と思いました。ウィキペディアを読むと、皇室が大きく関わる南北朝時代は、ドラマで描くのはタブーだったようです。
そのタブーが現在も続いているなら、大河ドラマ化は難しいのかもしれない。