大学院卒ニート、しやわせになりたい。

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秋祭りで幼稚園児が豚汁を売るってのは、買ったヤツが変態でも合法のビジネスです・パチスロ生活者が異世界転生した小説8話。

この世界の秋祭りは、どのようなモノなのか?と思いながら当日になったわけだが、俺の住んでいた世界、日本のそれと完全に一致していた。大きく違ったのは、この世界には電気はなく、灯りを灯すのは、レッドストーンランプであり、その動力(?)の分配は、レッドストーンによって行われていた。

俺の知る電線よりはだいぶ太い目の管、ホースぐらいの革製の管が配線され、レッドストーンランプに灯りを灯していた。配線の様子をみていたが、管の中にはレッドストーンを砕いた、レッドストーンパウダーが詰まっているらしい。魔法のような力なのか?この世界には電気はないのか?詳しいことは分からないが、いつの日か、パチスロを作るのであれば、そのあたりの仕組も知る必要はありそうだ。

焼き鳥や綿菓子、いろいろな食べ物の屋台であるとか、金魚すくいやヨーヨー釣りのような屋台が並ぶ中、ババア幼稚園の出店として、アミダクジ屋の準備を進めた。オランダさんの言った通り、くじ引きなどの抽選をともなうような屋台はなかった。そのような世界で、アミダクジ屋というのは受け入れられるだろうか?

そのあたりを気にしたのか、もともとの予定だったのかは分からないが、アミダクジとは別に豚汁も売るらしい。園児達と一緒に野菜を切ったりしたが、小学校の時の調理実習を思い出したし、鍋から器によそうのは、給食係を思い出した。

豚汁の売れ行きは、そこそこ良くて、聞くとババア幼稚園は毎年秋祭りで夜店を出しているらしく、定番のメニューらしい。まだ夕方だと言うのに、すでに酔っ払ったおっさんが、「やっぱり、秋祭りは、ロリ汁食わねえとな!」とか言っていたが、何かの聞き間違いだと信じたい。

豚汁はそこそこ売れるのだけど、アミダクジに挑戦する客はなかなか現れなかったが、一人の客が来てから、流れが変わった。それは、幼稚園に給食用の食材を配達に来る、今日も豚汁用の野菜を調達してくれたヤオヤノ=オサーンさんだった。

「よ!やってるね!アミダクジやるぞ!」

オサーンさんの言葉には若干のぎごちなさがあったような気がしたが、アミダクジの最初の客はオサーンさんになった。オランダさんがルール説明をする。ルールは単純で、スタート地点を一箇所選んで、ゴール地点には商品が用意されている。ハズレでも豚汁券がついてくる親切設計で、大当たりだと豚汁券が5枚ついてくる。

棒は10本あり、大当たりは1個。豚汁2杯の中当たりが2つ。ハズレは7つだった。豚汁1杯150チンで、アミダクジは1回250チンだった。期待値換算すると、わずかばかり幼稚園側が儲かるくらいの設定になっていた。まあ、こういうゲームが存在してなかった世界だから、そこまで計算する客もいないのだろう。

オサーンさんが、「南無三!」と大きな声を出して、スタート地点を決めた。そして、黒い布で隠されていたアミダのルートが公開されて、園児たちが「ディンディーン、ディディディ・ディ、ディンディン・ディディディディ……」と歌いながら、愉快なダンスを踊る中で、オランダさんが指し棒でアミダを進めていく。知り合いだけど、初めての客のオサーンさんの抽選の結果やいかに……!?豚汁を食べていた他の客もアミダがどういうものか気になっていたらしく、注目していた。そして、その結果は、まさかの大当たりであった。

「……いやったー!大当たりだぁ!」

オサーンさんは、少しだけ間をあけて大きな声で叫んだ!その声に、周囲の通行人たちが、なんだなんだ?と集まってきた。

「はい!大当たりの商品の豚汁券5枚です!」

ババア幼稚園の園児、ワリーちゃん。キカイ=ワリーちゃんが、オサーンさんに豚汁券を5枚進呈した。

「やたー!つまりは250チンで150チンの豚汁が5杯も食べられるってことかー!」

オサーンさんは喜んだ。それを聞いて、集まっていた通行人たちは「なんだか面白そう」とアミダクジに挑戦した。待っている時間を持て余した人は、豚汁を買って食べながら、順番を待っていた。

誰かがスタート地点を選んでアミダがスタートすると、園児たちの楽しい歌と踊りが始まった。お祭り気分というのもあるけど、当たったり、ハズレたりするのを皆で楽しんだ。大当たりを引いた人は、友達とか、通りかかった知り合いに豚汁券を配ったりしていた。なんというか、健全な風景だ。

オランダさんと当たりの数などを相談していた。金額的に赤字にならないように当たり数と金額の相談をしていたが、つまりは、豚汁の宣伝も兼ねているのだと分かる。ババア園長曰く「2杯目も食べたくなる味」に調整されているようで、友達から豚汁券をもらった人は、2杯目を買って食べていたし、サイドメニューの園児が握ったおにぎりなんかも売れていた。

「やっぱ秋祭りはロリ握りだぜっ!」

また、アミダクジは複数のパターンが用意されているらしく、客一人毎に張り替えたり、線を足したりして、同じ結果にならないように工夫されていた。アミダクジを貼り付けるのは、園児たちと一緒に作った板なのだが、材料が足りなかったのか、ところどころツギハギになっていた。

アミダクジはそこそこ盛況で、豚汁5杯の大当たりも10分の1くらいに出てきたし、それが更に集客に繋がった。オサーンさんにお願いして材料を調達して、豚汁の追加を用意したりした。園長が「味噌と水多目、具少な目」とか言った気がしたが、聞かないことにした。パチスロを打って生活していた俺だけど、豚汁を作って売ることって、こんなにも楽しいのか……と思った。


「もうお腹一杯。豚汁券が3枚余ったけど、どうしよう。友達もお腹一杯みたいだし、どうしよう。トホホ。」

「それだったら、1枚100チンで買い戻しますよ~。」

ワリーちゃんが無邪気に言った。今日、何度目かの耳を疑った。それが善意の仕組みだったのか、意図的なルールだったのかは分からないが、豚汁アミダクジ屋に、いわゆる特殊景品の仕組みが爆誕した。オランダさんは、どこまで考えて、このルールを作ったのだろうか?

「ほほほ、幼稚園のやっている豚汁屋はここか。賑わっているようじゃな。」

俺を一ヶ月余分に牢屋に入れていたヘンタイ領主が部下を引き連れてやってきた。そして、オランダさんの目が鈍く輝いた。小さい声で呟いた。

「セカンド・ステージの始まりね。」

オランダさんは、もともとそうだったのかは分からないが、祭りの熱気に当てられたのか、とても中二的な言葉を発した。中二だ。領主が豚汁屋にやってきて、一体、何が始まるというのだろうか……。

アミダクジの準備や歌と踊りを披露していた園児たちにも緊張が走った。なんというか、絵柄が変わった感じがした。