大学院卒ニート、しやわせになりたい。

働かないで、アフィリエイトとか、ユーチューバーで幸せになりたいです。

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スロットは遊戯だし、子どもが好きってのも変な意味じゃないんです!パチスロ生活者が異世界転生した小説3話。

「ほう君も日本から来たのか!異世界転生だな!」

駐屯所にいた、ライザップのCMに出てきそうな自警団員は、大きな声で言い放った。自分でも、薄々そうじゃないか?と思っていたが、あまりに非現実的すぎるから、その可能性を否定していたが、筋肉ムキムキな男に、クリアな声で言われると、納得みしかなかった。

「で!君は何か得意なことはあるかい?」

ライザップさんが言うには、転生者は、生前の、日本にいた頃の知識などを活かして、こちらの世界で生計を立てる者が多いらしい。例えば、元大工だった人は、こちらでも建築関係の仕事をするとか。部材や工法など、こちらの世界にない知識があったりして、転生者は重宝されるらしい。

「ぱ、パチスロとか得意ですけど……。」

言った後に、申し訳なく、恥ずかしい気持ちになった。この世界には、パチスロとかないだろう。この部屋にも電灯のようなモノはあるけど、他に家電製品のようなモノは置いてなくて、おそらく、テレビとか、DVDなどは存在しない世界に思える。生きていた頃も、人に誇れることではなかったが、転生した後も、同じ気持ちを味わうことになるとは……。

「パチスロ?なんだいそれは?初耳だねぇ!」

「あ、えーとですね……まあ、遊戯の一つですね。」

「遊戯?遊戯だって!?」

ライザップさんの言葉が、一際大きくなったので、身がすくんだ。怒られるのじゃないか?と思った。

「君、子どもは好きかい?」

「え!?(ドキ)、まあ、好きは好きですけど。」

私の子供部屋の布団の枕元や、ジャンプとジャンプの間に挟まっている楽天ポイントなどを使って買った漫画を、ライザップさんが見たら、腰につけている剣で、真っ二つにされるかもしれない。今さらながら、私の子供部屋、部屋の中に散乱していたマンガや、ゴミ箱の中身は、どうなったんだろうか。葬式の後に、片付けられたんだろうか。今、こうして剣を腰につけているマッチョマンと話しているが、日本に生きた自分はすでに死んだのだと思うと、悲しい気持ちになった。

「お遊戯が得意で、子どもも好きなら、保育園で働いてみたらどうだい?今日、君をここに連れてきた彼女が営んでいるんだよ!」

ああ、あのそこそこ年齢がいってそうだけど、オランダ風の少し痛い服装をしていた女の人か。保育士を志したことはないけど、子どもと遊ぶくらいだったら、ハードルは低いかもしれない。

「そうですね、せっかくなんで、やってみます。」

「じゃあ、明日になったら一緒に行こう!私は、宿直だから、もう少し起きているけど、寝室に案内しよう!もう少しで消灯だから、急にレッドストーンランプが消えても驚かないようにね!」

部屋を照らしている灯りは、レッドストーンランプと言うらしい。そうして、ライザップさんは、転生者や迷った旅人を保護するため寝室に案内してくれた。

「あ、お名前を教えてもらっていいですか?」

「私か?私の名前はラ=イ=ザップだよ!みんなからは、ライザップと呼ばれている!よろしくな!わはは!」

この人も、実は転生者だったんじゃないか?と思ったが、あえて聞かないでおいた。異世界に来ての初めての夜を、硬いベッドの上で、ゴワゴワで臭い毛布に包まれて過ごした。自分は、この世界でどう生きていけばいいのだろうか?

翌朝は、「朝だよ!起きるんだよ!」とライザップさんに起こされ、オランダ風の女の人の営む保育園に連れて行ってもらった。彼女は、買い出しに行くらしく、習うより慣れろということで、他の職員と一緒に、子どもたちの面倒を見ることになった。他の職員とは、オランダ風の彼女の母親らしい。

保育園と言っても、実際には、近所の4、5歳の子どもたちが十数人集まって来て、食事の世話をしたり、危険がないように遊んでいるのを見張っているだけだった。部屋の中で遊んでいる子や、お昼寝している子の面倒は、母親が様子を見ている。

俺は、運動場のような広場を走り回っている子ども達を眺めていた。どうやら、この広場には遊具のようなものはなく、走るのに飽きた子どもたちは、転がっている石を集めだした。

石が沢山集まると、それを大きい順に並べてみたり、5個ずつ列を作ってみたりしていた。話している内容を盗み聞きしてみると、「大きいね」とか「丸いね」とか言っている。今さらだが、この世界の人間は、全員が完全に日本語を使っている。俺も暇だったから、遊んでいる子ども達の会話に混ざってみることにした。大丈夫、ストライクゾーンじゃあない。大丈夫、ストライクゾーンじゃあない。

「この一番大きいのは、誰が見つけてきたの?」

「……えーと、誰だっけ?混ぜちゃったから分からない。」

子どもたちも、知らんヤツが話しかけてきたから、若干、緊張してきている。

「じゃあ、この一番丸いヤツは?」

「混ぜたから、分かんないです。」

若干、丁寧語になったのが、気を使われている気がする。もう自分は、子どもと話すのは向いてないんじゃないかと思えてくる。なんとも言えない、気まずい空気が流れる。なんとかして、何かを取り戻そうと、子どもたちが集めた石を一つ手に取り、手のひらで包み込んで、両手の中を行ったり来たりさせた。そして、両手をグーにして、子どもたちの前に突き出した。

「さ、さて~、石はどっちに入っているのでしょうか?」

「……え?」

子どもたちが、こちらの意図を汲み取れないような表情をした。

「そりゃ、どっちかに入ってるんじゃないですか?」

「……え?ま、まあ、当てずっぽうでいいから、どっちか指さして見てよ。」

「はぁ。」

子どもたちは、ふしょうぶしょう、全員が俺の右手を指差した。

「じ、じゃ~ん。石は左手に入ってましたぁ!」

「ちょっと意味がわかんないですね。失礼します。」

子どもたちは、部屋の中に入っていった。これは、子どもたちを見たり、大人達と話していて、後に気付いたことだが、この世界には、誰かと競い合った結果を喜んだり、偶然に生まれる結果に喜んだり、そういう概念がないらしい。パチンコ・パチスロがないこともとより、娯楽としてのくじ引きなども存在してないようだ。

幸せを多く知った子は、幸福な人生を送る。そんな言葉を日本で聞いた気がした。その言葉にはカッコ書きで「ただし、パチンコ・パチスロは除く」と書かれていたに違いない。この世界には、パチンコ・パチスロのようなゲームの結果で喜ぶような文化は存在していない。

もしも、俺が何かの意味を持って、この世界に転生したのだとしたら、パチスロ生活者として、その面白さをこの世界に伝えるためじゃないか?と思えた。いや、そこまで壮大な話じゃあなかったとしても、くじ引きも存在していない世界であるならば、新しい価値観、事業を持ち込むことで、お金持ちになれるかもしれない。

日本では得られなかったモノを得られるかもしれない。そんなことを広場の片隅で考えていると、母親職員が私を呼びに来た。

「子どもたちが部屋に戻ったら、一緒に戻って来てね?」

その言葉には、新人職員への、明らかな棘があった。くそー!そういうところは、日本と同じなのかよ!

ともかく俺は、新しい世界で、保育士見習いという仕事を得た。子どもたちと関わりながら、パチンコ・パチスロのようなもので、どのように稼ぐことができるか、考えてみることにした。時間はある。もう、DMMぱちタウンで、ジャグラーと絆2のデータを手入力したり、芸能人来店日の前日に下見をしたり、抽選整理券をもらうために、早起きするようなことはないのだから。