大学院卒ニート、しやわせになりたい。

働かないで、アフィリエイトとか、ユーチューバーで幸せになりたいです。

スポンサーリンク

オランダさん、あみだくじとかどうですか?パチスロ生活者が異世界転生した小説5話。

「縦に線を引きまして、そこに横線を足していくんです。」

「線は何本引くんですか?」

「そうですね。例えば、そこにいる人数だとか。」

「じゃあ、あなたと私ですから、縦線は2本にしましょうか。」

「あ。それはちょっと少ないかもですね。」

保育園で行うお遊戯に関して、オランダさんと話し合いつつ、俺の生きた日本であった各種ゲームの面白さを、異世界の人間達に伝えることができないか?と、シンプルなあみだくじを提案してみた。

「それで、縦線の中に一本当たりを決めます。これにしましょうか。そして、他の人に当たりの線を当ててもらう遊びです。」

「当たりの線はこれですね。簡単すぎませんか?」

「あ、そうじゃなくて、縦線の上から進みまして、横線に差し掛かると、そちら側に曲がらないとダメなんです。」

「なるほど。じゃあ、当たりは、ここですから、逆に進んで行けば良いわけですね。」

オランダさんは、当たりの線を逆行する形で、当たりの線を探ろうとしはじめた。この人は、頭が良いのか悪いのか分からないな。いや、あみだくじに限らずゲームという概念を持ってない人は、こういう反応をするのかもしれない。この世界でゲーム的なものを流行させて金(チン)を稼ぐってのは、至難の業かもしれない。目の前にいるオランダさんに対して心の中で「朴念仁め」と呟いた。

当たりから逆行したら、面白さが損なわれるので、縦線の中間部分は、別の紙で覆って隠した。その状態で、線を一本選んでもらって、覆い紙を外して、オランダさんが選んだ線のルートを辿っていった。

「残念!はずれです!」

「そうですか。覆いの紙があるので難しいですね。」

「楽しいですか?」

「楽しくはないですね。」

感想に「難しい」が含まれているのは、良い線いったのじゃないか?と思ったが、どうなんだろう。難しいということは、当たった時に、嬉しいと思えるかもしれない。

「もう一度どうですか?残りの線は5本ですから、次は当たるかも?」

「そのうち当たるでしょうけど、もうけっこうです。」

俺は、あみだくじを書いた紙の上に20チン硬貨を5枚積み重ねた。

「じゃあ、当たったら、この100チンをあげますよ。」

「お金は、そのように使うものではありません。今日の会議は、ここまでにしましょう。」

ミランダさんは、職員室から出ていった。その声には、怒気が含まれているように思えた。理由は分からないが、ゲーム的なものはさておき、ギャンブルへの忌避のようなものを感じた。これは、教育によるものなのか、文化的なものだろうか?もしも、教育だとしたら、チンの当たるあみだくじは、園児の心を掴むことができるかもしれない。

……俺の頭の中で、何がどうリンクしたかは分からないけど、一人の男のことを思い出した。そいつは、5円スロットでバジリスク絆を好んで打っているヤツだった。絆2ではなく、5号機の絆があった頃。その後、日本中が騒然となった新型ウイルスが流行する前に、そいつは消えた。

スロットのレートとかは、別のいい。俺も5スロを打っていた。立ち回りとかも、人それぞれであって良いのだけど、そいつは、思った通りの展開にならないと、パチスロの筐体をバンバンと殴っていた。巻物(チャンスリプレイ)をひいて、バジリスクチャンスに当選しなかったら筐体を殴る。それは、エスカレートして、ほぼ毎ゲーム殴っていた。実は出禁になったんじゃないか?と、ほくそ笑んでいたのだが、実際のところはもう分からない。

なぜ、バジリスク絆叩きクソバカ野郎のことを思い出したのかは分からないけど、チンを賭けたあみだくじの延長には、そういうモノもあるのじゃないかと思った。

子どもは、わりと好きだ。変な意味でも好きだ。匂いがやばい。それはさておき、教育や文化がないからこそ、新しい概念の伝播には、慎重さが必要なのじゃないか?と思った。

うんうんと、一人で頷いている時に、オランダさんが戻ってきた。

「あの、チンとかはいらないので、さっきの線のあみだくじ、もう一回やってみて良いですか?まだ、紙残ってます?」

それを聞いて、手ごたえを感じたのもあるのだけど、少し怖い気持ちにもなった。少なくとも、昨日までは、この人はあみだくじというものすら知らなかったわけだ。仕事も全部ほっぽりだして、あみだくじのことしか考えられなくなって、洗い物などをしている時に、「あみだくじ!あみだくじ!」と、叫ぶのじゃないか?と、昔に観たテトリスにハマっちゃった主婦を描いたドラマのことを思い出したのだけど、そのシーンしか覚えてない。

「ええどうぞ。さっきよりも当たる確率は上がってますから、次は当たるかもしれんね。」

オランダさんは、一本の線を選び、目を少し輝かせて、線を下に下に辿っていった。はたして、次は、当たるのだろうか…?