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保育園の子どもが喜ぶ遊戯を考えて、将来的には金につなげよう・パチスロ生活者が異世界転生した小説4話。

「あなたは、遊びが得意だって聞きましたけど、日本というところに住んでいた時に、子どもが喜ぶ遊戯とかなかったのですか?」

俺がこの世界に転生してきて、最初に出会った女、可愛らしいオランダの民族衣装のような格好の少し痛い女だ。お互いに自己紹介をして知ったが、年齢はアラフォーで、見た目よりも年がいっていた。34歳くらいだと思っていたのだが。あと、名前は、イタイー=オランダという名前だった。「イタイー」は、「ナタリー」と同じ発音で、「オランダ」は「ミランダ」の発音と完全に一致したいた。俺は、オランダさんと呼ぶことにした。

「鬼ごっこや、かくれんぼ、泥警、輪投げ、あみだくじ、まあ、色々と日本の遊びは知ってるんですけど、子どもはあんまり喜んでくれないんですよ。」

「あんまりというか、困惑しているようですよ。」

オランダさんの横にいた、彼女の母親が話した。オランダさんの母親の名前は、ババー=オランダ。「ババー」は「婆(ばばあ)」の発音と完全に一致していた。ババーさんのことは、園長と呼んでいる。「遠慮なさらず、ババーと呼んでいただいてよいのよ?」とも言われたが、丁重にお断りした。

「えっ?!困らせてたんですか?妙に丁寧語で話すし、距離も感じてましたけど。」

「知らない国から来た可哀想な人だから、子どもたちも気を使ってるんです。」

オランダさんの言葉を聞いて、正直、とほほな気持ちになったが、日本でパチスロ生活をしている時は、ロリ……じゃなくて、子どもと話すこともなかったし、朝イチの早い並びの時に、小学生の登下校と重なったりすると、未来のために黄色い帽子をかぶって学校に向かっている子どもらの姿を眺めると、その頃は狙い台と当日の設定配分のことしか考えてなかったが、今思うと、やるせない気持ちになっていたのじゃないかと思う。

今は、異世界で保育士見習い。俺のパチスロ生活者の能力を活かそうにもパチスロが存在してないし、この後、どうなっていくかも分からないが、俺が日本から持ち込む概念で、子どもを楽しませることができたら、ゆくゆくは、大人も楽しませて、お金になるんじゃないかと目論んでいる。

「鬼ごっことか面白いと思うんですけどね。」

「鬼って何ですか?」

「鬼ってのは……そうですね。架空の化け物ですね。」

「化け物?!そんな恐ろしいモノの真似ごとをするんですか!?」

この母と娘は、どうにも頭が硬い。とくに、ババーの方が硬い。かちこち。もしかしたら、この世界の人間は、みんなそうなのかもしれない。ライザップさんとか、声も大きくて朗らかだけど、融通は効かない感じがあった。

子ども達と鬼ごっこをしてみたところ、どうにも、そのゲーム性を理解してくれなかった。鬼になるとタッチしなくてはいけない。鬼以外はタッチされてはいけない。タッチされると、鬼役が交代となる。世界こそ違えど、同じ人間だし、事実、問題なく日本語で会話できているのだけど、「鬼になりたくない」とか「鬼になったら追いかけてタッチしたい」という気持ちにはならないみたいで、最終的にリレーの練習のようになっていた。タッチしたら、次の子が走って、タッチした子はインターバル……という感じで。

走ることは好きなようで、子どもたちは、ストイックに走り込んでいたが、鬼ごっこというゲームの面白さは理解できないようだった。

「体力をつけておけば、将来役立ちますからね。」

「そうそう。化け物の真似なんてしなくていいんです。」

面白みのない母娘が、そんなことを言う。この二人が、特別に面白くないのだろうか?子どもたちのお昼寝の時間に、職員同士でお遊戯の内容を話し合ったりするのだが、正直、「遊び」の話をしている感じはなかった。子どもたちが、運動場の石を集めていたのも、一応、遊戯ということだったが、あれも転がっていると危険な石を回収する目的があったそうだ。

この保育園の職員と、通っている園児が特別面白くないのかは分からないので、休みの日に、街に出かけてみることにした。オランダさんを誘ってみようかとも思ったが、楽しくなる気がしなかったので、一人でブラついてみようかと思った。お給料も貰ったから、何か食べてみるのかもしれない。ババー園長から渡された、硬貨の入った革袋は、パチスロのドル箱と同じくらい重かったし、異世界に来ていると実感した。日本円だと何円くらいなのだろか?通貨単位は、丁(チン)と言うらしい。漢字やんけ。

次の休日、俺は市場に行ってみることにした。保育園も、自警団の屯所も、街の外れの方にあったが、オランダさんが買い出しにでかけていく市場は、街の中心のあたりにあった。テレビの海外に出かけて行く旅番組とかで出てくるヨーロッパとかで、チーズとか、肉が裸で並んでいるような雑多な市場だった。

市場には、働いている人と、昼間から酒を飲んでいるヤツら、日本でも尼崎とか、十三で見かけるような風景はあった。少なくとも、この世界にも飲酒という娯楽はあるらしい。俺も一杯飲みたくなったが、朝から飲むと、そこで1日が終了するので、焼き鳥のような料理を屋台で買った。値段は100チン。1枚20チンのコインを5枚渡した。

焼き鳥を食べながら、市場の様子を見て回った。夜勤の仕事だったのか、朝から晩御飯の雰囲気を出している労働者などもいるし、老人たちもテーブルに集まって、会話などを楽しんでいた。一番知りたかったのは、将棋だとか、オセロだとか、麻雀のようなゲームをしているヤツらがいないか?ということだったのだが、俺が見た範囲ではいなかった。酒を飲んで楽しそうにしたり、会話をしたり、お互いの肩を揉み合ったりしているが、カードを握りしめたり、将棋盤のようなモノを囲っているような連中はいなかった。やはり、この世界には、ゲームのような娯楽はないのかもしれない。

ないのであれば、俺の生きた世界に数多くあったゲームを持ち込んで来ることは可能なのだが、問題は、それを楽しんで貰えるか?である。トランプ、花札、オセロ、将棋、麻雀、どれも完成されたゲームだと思うが、楽しんで貰えないなら、意味をなさない。存在していない価値観を、発見してもらうのは、どうしたらいいのだろうか?そんなことを考えつつ、市場を後にした。帰り道で、同じく市場に来ていたオランダさんに出会って、一緒に帰ったが、想像以上に会話が弾まなかった。