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【パチスロ異能小説】設定の見える目でマイホでツモりまくりで勝てる。

「漫画のデスノートには、相手の本名が見える目の能力があったけど、そういうのはないの?」

1日6000円で寿命を売り飛ばすことに、抵抗を感じた私は、デスノートに登場するリュークと外見が完全に一致している死神スロッカスに聞いてみた。

「あるぞ。どんな目が欲しい?」

デスノートを話題にすると、スロッカスは怒るのじゃないか?と思ったけど、そんなことはなかったようだ。1日の寿命が6000円というに抵抗があった。その金額は、誰であっても平等らしい。私は、ローンとかも苦手だ。だから、住宅を買うのも気が進まない。1日6000円というのは、ローンとは違う概念なのだけど、なんというか、買い切りたいという気持ちかもしれない。

1日6000円で、ずるずると何日、何ヶ月も、何年も寿命を消費していくならば、5年なら5年、10年なら10年、一括払いで寿命を支払ってしまいたい。デスノートの本名が分かる能力は、残りの寿命の半分だったが、スロッカスは、どのような異能の目を持っていて、対価としてどれだけの寿命を要求するだろうか?

「例えば、どんな目があるの?」

「くくく。そうだな。俺が持っている死神の目はどうだ?」

(死神の目って言っちゃったよ)。

「設定示唆演出や、小役による設定判別など不要で、パチスロの設定が分かる目だ。」

「いいね。でも、その目を貰うと、寿命はいくら必要なの?」

「ふん。原作では、残り寿命の半分だったが……」

(原作って言っちゃったよ)。

「俺の死神の目も、残りの寿命の半分をもらおうか。これも、誰しも平等だ。たとえ、二階俊博幹事長であってもな。」

人選に偏りを感じる。

「……なるほど。」

「まあ、寿命の半分ってので、この目をもらったやつは、今までいないがな。」

実は、スロッカスの死神の目はかなりの破格だと分かる。仮にジャグラーでビッグボーナスをひく能力を毎日使ったとする。その人は、1日で2日分の寿命を消費しているわけで、死が訪れる日まで能力を使うのであれば、それは寿命の半分で取引きしたことと、同等だと思う。

しかし、寿命の半分は重い。なんとか、スロッカスを言いくるめて、捧げる寿命を値引きできないだろうか。目の前で、イカフライを食べている死神。一口食べるごとに、少なくなっていくイカフライを悲しい目で見ている死神であるなら、付け入る隙はあるかもしれない。

「残り寿命の半分は、流石に多すぎると思う。能力になんらかの制限をかけるとかで、値引きしてくれない?」

「ふむ。そうだな。くくく。じゃあ、チェインクロニクルの設定を看破できる目なら、寿命1年でやってもいいぞ。」

「設置されてない台の設定を看破してどうする。」

「チャレンジャー幸手に行けばいい。」

「設定なんて、入ってる訳ないじゃない。」

なんのことか分からない人は、You Tubeで「髭紳士」と検索して欲しい。機種に絞った設定看破は意味がない。どんな台であっても、ホールに最大で設置できるのは最長で6年であるし、設定の入る人気台であるなら、競争率も高くなる。設定が分かったとしても、座れない可能性が高くなる。

機種を絞って安くなるんだったら、店を絞ったらどうだろうか?例えば、特定の系列店であるとか、店舗であるとか。聞いてみる価値はある。

「じゃあ、例えば、私が通っているユニバースⅢの限定で、設定を看破する目だったら、いくらでくれる?」

スロッカスは驚いた顔をした。漫画で言うなら、大きな『!』が頭の上に浮かんでいるような顔だ。私の問いかけが意外だったんだと思う。これは、良いところに切り込めたかもしれない。

「ユニバースの本店じゃなくて、Ⅲがいいのか?」

「うん。」

「ユニバースは市内に4店舗あるな。系列店全部なら、オマケしてやって、寿命15年でいいだろう。」

「そうじゃなくて、私はⅢが良いの。一番家から近いし。」

「なるほどな。くくく。安易な理由だ。Ⅲだけなら、5年でいいだろう。」

勝った。完全に勝った。仮に1日6000円の能力だとしたら、1年が365日で……スマホの電卓アプリを起動して計算してみる。1095万円。1日6000円の能力もすげーな。だけど、それ以上の期待値は確実にある。破格すぎる買い物だ。

はたして、死神がそのような単純な期待値計算を間違えるのだろうか。目の前の数字に踊っていた私は、死神の笑み、表情の意味を取り違えていたらしい。


目の前に光の輪が浮かび上がり、私の顔に近づいてくると、目の前が光でいっぱいになった。どうやら、私の目の中に吸い込まれたらしい。かくして、私はパチンコ店、ユニバースⅢ限定で全てのパチスロを設定看破できる目を手に入れた。

意気揚々と店に行くと、筐体の前に数字がホログラムのように浮かび上がっている。今まで設定は見えなくても、想像していた通りの設定が浮かび上がっている。凱旋、沖ドキ、番長3、サラリーマン番長2は、全て設定1。バラエティーコーナーも設定1。旧イベ日でのなんでもない今日は、バジリスク絆2も全台設定1。

このあたりは、だいたい予想通りだった。だったら、死神の目の取引なんて必要なかったのじゃないか?と思えるかもしれない。本命は、ジャグラーコーナーだ。マイジャグラー3、4。ファンキージャグラー。ゴーゴージャグラー。これらの4機種には、確実に設定が使われている。毎日って訳ではないけど、旧イベ日以外にも56が使われているし、毎日どこかに勝てる台がある。そして、旧イベ日以外はライバルも少ないから、ツモれる可能性も高い。勝った。完全に勝った。

スロッカスの笑みの意味が、ほどなくして分かった。その事実に、愕然とした。ジャグラーは目の前の数値よりも根拠。ジャグラーの設定判別は難しい。You Tubeで聞いた数々の名言が頭をよぎった。マイホに、設定6なんてなかった。いや、ただしくは3月3日の年一日にだけ設定6が使われていた。当然、競争率が年で一番高くなる日だ。

今まで私が見ていた、大爆発していたマイジャグラーも、ファンキージャグラーも、ゴーゴージャグラーも……自分が打ってみて、超メダル出た時も、全部設定4だったんだ。なんなら、設定3の台で4000枚出ていたこともある。目の前に浮かぶ3という数字を疑って、目をゴシゴシした。設定が見えるからこそ、ジャグラーのポテンシャルに驚かされた。

驚くのはいいんだけど、こちとら寿命を5年捧げているわけで、色々と考えた結果、確実に設定4をツモって打つことにした。当時付き合っていた彼氏も、毎日仕事の後に合流させて、設定4を打たせる。設定4が埋まっている時は、設定3も二人して、確実に回すことにした。いつの日か、3月3日以外の日でも設定56が使われることを信じて、マイジャグラーの設定3の101.2%、設定4の104.3%の機械割を、チェリーを狙って積み上げていった。

店からしたら、ほぼ毎日最高設定(4だけど)をツモっている女、カップルということになる。店から怪しまれないように、パチスロ好きヤンキーと、その彼女という雰囲気を醸し続けた。彼氏には、私の台選びを100%信じてもらうように説得した。自分が趣味打ちしたいのであれば、財布を分けてもらった。最初の頃は、設定1の絆2とかを叩いていたけど、結果に結びつくから、私の言うことを聞いてくれた。

設定4と分かって打っているから、カチカチ君を使う必要もない。また、ファンキージャグラーの設定4の台が空き台になっていれば、ふらふらと台移動したりもした。ファンキージャグラーは、設定4で103.5%。100%ツモれるからこそ、怪しまれないことに徹底した。インターネット掲示板の爆サイでは「チョロ打ちウロチョロ夫婦」と揶揄されていた。結婚してないっつーの。悪口こそ書かれていたが、私達が勝ち続けていることに気付いているヤツはいないようだった。

実際、機械割約104%というのは、安定しない。機械割104%というのは、ざっくりと説明すると、10000枚使えば、平均すると10400枚出ているというモノだ。もちろん、確率は上振れも、下振れもするから、設定3が設定6の111.7%のような挙動を見せる日もある。だから、設定4でも負ける日は、負ける。大きく勝つ時もあるが、年毎の収支をトータルすると、きっちり104%に近づいていった。

平日や旧イベ日に設定6が入ることを信じて、Ⅲに毎日通い、設定4を打ち続けた。旧イベ日には、絆2の設定4を彼氏に打たせた。しかし、Ⅲに設定6が入るのは年で1日だけであり、度重なるコロナの波が経営を悪化させ、コロナ第32波が日本列島を震撼させた頃に惜しまれつつも閉店することになった。

閉店するその日まで、設定配分は悪くなりつつも、設定4を使い続けてくれたことは感謝している。スロッカスと死神の目の契約をしてから、ちょうど5年目のことだった。


最終日に、あえて交換しなかった貯メダル500枚分を全て駄菓子に変えた。そして、段ボール箱2つを窓際に置くと、スロッカスが現れた。

「うほっ!これ全部景品!?うほっ!」

5年ぶりに会うスロッカスは、何も変わってなかった。私が、再びを呼び出した理由は、使えなくなった死神の目の分を寿命を返してもらうことだった。なぜなら、一生使える能力を5年しか使ってないからだ。

「あの店に設定56はなくて、そのうち閉店するのを見越しての5年だった。まさか丁度5年だとは思わなかったがな。だから、系列店にしないか?と聞いたんだがな。今から、本店の方の目をやろうか?くくく。本店の方が設定配分は高いぞ。」

その申し出は丁重にお断りした。しかし、山盛りの駄菓子と、私の5年間のジャグラー生活が面白かったらしく、寿命を1年だけ返してくれるらしい。その1年という数字から、私の残りの余命を逆算できそうな気がしたが、やめておいた。

「それじゃあな。もしも、目以外でも異能が欲しくなったら、気軽に呼び出していいんだぞ?」

スロッカスは、窓際から飛び去った。名残惜しそうにしていたのは、私が女性スロッターだからかもしれない。死神に、そういう感覚があるかどうかは分からないけど。

死神の目を手に入れた26歳からの5年間。同棲していた彼氏のおかげもあって、彼氏に手渡した勝ちの一部を除いても、貯金は3000万円を越えた。1日6000円の異能よりも、遥かに稼ぐことができた。結局、一緒にジャグラーを回した彼氏とは別れたのだけど、108GAMESの代表・滅(めつ)の主催するオンラインサロン『大百鬼大夜行』で出会った人と結婚することになった。

3000万円という貯金の一部を使い、一戸建てでも、新築でもないけど、中古のマンションも一括払いで購入した。そして、今、私の中には命が宿っている。

「4年……。」

まだ膨らんでいない、自分の腹をなでながら呟いた。スロッカスと死神の目の取り引きをした頃は「ババアになってからの5年なんてどーでもいい!」と思っていた。1年オマケしてくれたけど、得た3000万円というのも、大きいのだけど、自分の中で日々育っている命のことを考えると、その4年という月日の大切さを感じるようになった。

スロッカスは、私の寿命を5年奪ったわけだけど、オマケで1年返してくれた。もしかしたら、寿命を奪うだけじゃなくて、寿命を延ばす方向の異能や方法などもあるのじゃないかと思った。

あるかどうかは分からないし、ないかもしれないけど、この子が生まれて、手がかからなくなってパートとかできるようになったら、また窓際に駄菓子を置いて、呼び出して見るのも良いかもしれない。

だけど、もしも、一年寿命を延ばせるとしても、少なくとも私は、それに金額をつけることはもうできない。もしも、1日6000円で、1年が219万円で寿命延ばせるなら、喜んで払う……かもしれない。

赤ちゃんが、私のお腹を蹴り返したような気がしたが、まだ、お腹も膨らんでもないから、完全に気のせいだと思う。この子は、どんな子に育つだろう。この子の未来の期待値が、無限であると信じたい。

モデルにはしてない。

余談。主人公の名前を「浜音美沙(はまねみさ)」とかにしようかと思ったけど、本文に書く余地なかった。名前が出てくる流れにならなかった。