大学院卒ニート、しやわせになりたい。

働かないで、アフィリエイトとか、ユーチューバーで幸せになりたいです。

スポンサーリンク

【ジャンプ部屋おじさん】松井優征の逃げ上手の若君の1話を徹底分析すれば新連載初回術が理解できると思うので漫画家志望者はやった方が良いと思う【のでやってみた】

どーも、ジャンプ部屋おじさんです。1994年頃からジャンプ捨ててません。年齢バレるぅ。

新連載1話。

漫画バクマン。では、「勝負の2話」なんて言葉が出てましたけど、最近は、ぶっちぎりで1話が面白い作品が人気作品になっていると思います。思い浮かぶのは、ハイキュー!!、僕アカ、チェンソーマン…などなど。松井優征作品では、暗殺教室もそうでしょう。アイシールド21とかも、1話が面白かったように思えます。

松井優征氏自身が、漫画賞の審査員とかをして「漫画は掴みだ」とか、魅力的な1話目に関して言及されているので、本人が描く1話というのは、新連載初回に必要なモノが詰まっていると思います。なので、ジャンプ2021年8号から始まった「逃げ上手の若君」を、各ページ分析(感想)してみようと思います。

お手元にジャンプ8号を用意してもらうか、以下のページを同時に開くと良いと思います。

[第1話]逃げ上手の若君/本誌新連載試し読み - 松井優征 | 少年ジャンプ+

いきなり寄り道の暗殺教室の1話。

手元に暗殺教室1話がないので(ジャンプ部屋に行けばあるのですが)、記憶に残っている1話の上手いところを列挙してみると。

  1. 中学生が銃を構えるという衝撃的なスタート。
  2. 暗殺というジャンプでは目新しいテーマ。
  3. すでに、殺せんせーが担任になっている時点から始まる。
  4. クラスメイト達が抱える問題とか、正体などは伏せられていて、1話よりも前の話は少しずつ回想などで振り返られる。
  5. 人間時代や、化け物になった頃の殺せんせーの回想が断片的に描かれ、線がシンプルな斬新な生物には、読者が同情しうる過去がありそうなことが、示される。

覚えていることは、こんな感じです。物語の後半で重要になってくる、茅野カエデなども、普通代表なクラスメイトとして1話に登場していたはずです(うろ覚え)。

逃げ上手の若君1話。

ジャンプ表紙。主人公の北条時行(美少年)。着物姿であるのと、「史実」というのが「歴史もん」であることを示している。タイトルの「逃げ上手の若君」というのも、字面的にもキャッチーであると思う。

1ページ目。

討死、自害、死…という武士世界に対して「逃げる」が作品のテーマと分かる。「英雄」や「伝説」という言葉が心を掴む。また1ページ目の内容が後半への前フリの役割も果たしている。

と、同時に「歴史もんは読まない」という読者はいるはずで、このテーマを選べるのは、魔人探偵脳噛ネウロ、暗殺教室と人気作品を排出した松井優征氏の作品である部分は大きいと思う。

新人作家がいきなり、織田信長とか描くようなハードルは、ない。

見開き扉絵。

鬼の形相の鎧武者達と、華麗に跳びはねる主人公の対比。カラーで描かれる羽のようなヴィジョンが気になる。新連載1話で行われがちな、主要キャラを並べるという方法論はとられてない。

私は「歴史もんはジャンプ新連載の鬼門の一つだけどどうなるか?」と思って読み始めましたけど、サブタイトルの「滅亡1333」で、ぎゅっと心が掴まれました。

2ページ目。

ヨダレを垂らしている北条高時と、英雄の足利高氏の登場。歴史に詳しい人なら、この時点で展開は分かるわけだけど、私は歴史に詳しくない。

ヨダレを垂らしている様子は、歴史の知識と関係なく、掴みとして「やべえ奴」という風に刺さると思う。

3・4ページ目。

英雄・足利高氏と逃げ上手の若君(主人公)の対比。高氏を絶対的主人公と称する。歴史知らずは、知らん時代の知らん奴となるといけないから、丁寧めの解説が入る。

歴史もんの難しさは、社会科の授業のようになる可能性ある部分だと思うけど、今のジャンプ読者は、青年・中年も多いから、ある程度の文字量は許容されるはず。

5・6ページ目。

若君の名前は、北条時行。そして、自称許嫁の清子の登場。ルックス的に漫画として描かれる美少女キャラではない。ヒロインではないけど、初期を盛り上げるおもしろキャラかな、と私は思った。

出陣する高氏に対して、大人も手を焼く逃げ上手が描かれ、主人公の才能の片鱗が描かれる。

7・8ページ目。

清子の父親により、鎌倉幕府の現状が語られる。極端に描かれるヨダレの総帥が解説的な内容を飽きさせない。

美少女的には描かれてなくて、銭を目に入れたりするけど清子、武士の器とは違う部分、「優しさ」の部分で主人公を評価している部分は、キャラに厚みが増す。

9・10ページ目。

武士の鑑の高氏と、時行の対比。「教科書に一度だけ」という文言は、織田信長のようなメジャーな武将じゃないことを伝え、むしろ「知らなくて当然」というふうな言い回しは、歴史嫌いの読者の心理的ハードルを下げている(と思う)。

11・12ページ目。

「少年漫画の主人公」という言葉が秀逸。歴史が題材だけど、少年漫画だから安心しろ!と受け取った。あと、余談だけど、この物語の語り手は、潮田渚(暗殺教室の生徒側主人公)なのじゃないかと思った(完全な想像)。

「鎧箱」のくだりは、並みの逃げ上手ではなく、異常性を持っていることが示される。大人に期待されない少年というのは、読者が同情・応援したくなる主人公かもしれない。

最近のジャンプキャラのトレンドは「応援」ということらしい。

13・14ページ目。

地位や名誉よりも、平和に生きることを望む主人公は、共感されると思う。そして、巫女の登場。清子に比べると、テンプレ的な美少女キャラとして描かれる。

少年漫画の1話的には美少女が出てくるのは重要だと思う。

15・16ページ目。

諏訪頼重の登場。今まで控えめだった漫画的表現が噴出する。強弱を操作できる後光など。彼の登場も掴みであるが、「歴史もんだけじゃなくてギャグもやる」ということが明示される。

逆説的に言うと、諏訪頼重がボケキャラじゃなかったら、ちょっと堅苦しい内容になったと思う。

17・18ページ目。

未来が見えるという歴史もんとしてはチートキャラが登場したけど、見えることがボヤボヤだったりすることで、カモフラージュしている。

19・20ページ目。

2年後の未来が、この作品のクライマックスだと分かる。「ジャンプは人気なかったらすぐ終わる」というのは、ジャンプ読者は分かって読んでいるので、物語の着地点が示されることは、安堵感につながるし、「この物語はどこに向かうのだ?」と、読者が迷子になる可能性が減る。

と、同時に主人公が8歳だと分かる。ジャンプで低年齢主人公は珍しいと思うが、アラサー・アラフォー当たり前のジャンプ読者層を考えると、8歳の男の子ってのは、応援したくなると思う。

最近のジャンプ主人公のトレンドは応援(大事なことなので2回書きました)。

21・22ページ目。

主人公の異母兄、北条邦時が登場。蹴鞠をしながら、北条の血筋を語る。夕日の中で、ほのぼのと描かれるが、落日と、地面に落ちようとする蹴鞠が印象的。

23・24ページ目。

前のページの蹴鞠の落下と、映像的につながる。すでにアニメ化や実写化を意識したつくりのように感じた。

このあたりから、ネタバレの要素が強くなるので、未読の人はここで記事を閉じてください。ちなみに、ジャンプ公式が出したPVは、25ページ目を思いっきりネタバレしていて、公式で最大のネタバレをしていた。

未読の人は。
ここで。
ブログ記事を閉じるように。

歴史に詳しい人は、サブタイトルから予想できた展開。私は詳しくないから、予想外だった。邦時の語った「英雄になる条件」が唐突に訪れる。

1ページ目に描かれた、討死、自害などの要素が、ここで再び描かれる。

25・26ページ目。

物語のラスボスが雄々しくとも感じられる形で描かれる。角度的に見えないけど、股間が光っている可能性ありそう。

「声が聞こえる」と、反乱の目的が抽象化されることで、ラスボスに異常性が帯びる。これは、最近のトレンドではなく、昔からそうだけど「魅力的な悪役」というのも重要な要素。

例を挙げると、くしくも8号で最終回となった「ぼくらの血盟」は終始、悪役が魅力的じゃなかった。魅力を削いだ部分は…。

  1. 悪役っぽさをだすために、快楽主義者的で破滅的な思考。
  2. 強大な力を持っていても、計画性などが雑で、ツッコミどころ満載。
  3. 同情させたい余地を持っていても、1.と2.が足を引っ張って、同情できない。

これらの観点で、逃げ上手の若君のラスボス(暫定)を見てみると、武力などは英雄と呼ばれるほどに高く、反逆を悟られないほどに計画的であり、その動機は「誰の声」とかつって、読者を突き放している感じが魅力的だと思う。

ぼくらの血盟を引き合いに出したのは、ただ、書きたかったからです。

27・28ページ目。

神速の謀反の解説。教科書的な内容にもなりうるのだけど、魅力的なラスボスが行った謀反の情報は、興味深く読める。前のページの強烈な見開きがあるから、テキスト主体のこのページが活きる。

29・30ページ目。

サブタイトルの意味が分かる。8歳の主人公に起きたことと考えると、応援の気持ちがわく。実際の子持ち読者は、どんな気持ちで読んでいるか分からないが、作品人気につながる部分もあると思う。子持ちししゃも。

最近は、「漫画であっても、子どもに悲惨な目にあわすな!」という意見もあるけど、この作品でもそれが飛び出したら、多くの人に読まれているという証拠になると思う。

主人公の絶望が、このページを読ませる力となっている。

31・32ページ目。

諏訪頼重の再登場。作品のテーマである「逃げる」が本格的に始動する。と、同時に諏訪頼重のギャグ要素が、凄惨な展開を緩和させる。

33・34ページ目。

地獄絵図。主人公からのラスボスへの想い、逃げる主人公に対して追う側のラスボスの明示。そして、諏訪頼重の変態性で場をつなぐ。

諏訪頼重に関しては、「シリアス全振り」の話も好きな人もいるだろうけど、松井優征作品のファンは、こういうキャラが出てくることを望んでいたとも思う。

だけど、「盤石な1話にするには、変態的なギャグキャラを出すべき!」とは言い難い。

35・36ページ目。

主人公の言葉により、ラスボスの偉業が語られる。私は歴史に疎いし、今からラスボスの歴史的な人物像を調べると、壮大なネタバレをくらうので、調べられないのだけど、一般的な人物評価と重なるのかもしれない。

37・38ページ目。

主人公に起きるショッキングな展開。鎌倉の滅亡を遠くから眺めるのではなく、理不尽にその真っただ中に放り込まれる。つまり、ここからが当事者としての主人公が描かれる。

ラスボスが「誰の声」とか言ってたクライマックスの、次のクライマックス。1話目は50ページとかあるけど、クライマックスが2度ある。

39・40ページ目。

軽やかな見開き。この作品の見せ場は「攻撃じゃなくて逃げ」であることが分かる。あと、主人公の動作・動線が絵的に分かりやすいのが良い。

派手な見開き描いたる!と勢いに負けて、「このシーン、何してるか分からねえ!」って、漫画はよくある。

41・42ページ目。

カラー扉絵で描かれた翼のビジョンの意味が分かる。諏訪頼重に詰め寄る主人公の表情や、額の青筋がとても良い。

お色気要素ほどは分かりやすくないけど、読者の中に一定数あるだろう、特殊な需要に答えている。事実、Twitterで、このシーンに悶絶する読者は確認済。

ただ、新連載1話術として「特殊な需要に応えたシーンを描け!」とは、言い難い。

43・44ページ目。

主人公の特性を絵で描いてから、どういうことかの「生存本能」が解説され、ラスボスの対比が描かれる。攻撃VS攻撃じゃなくて、攻撃VS逃亡が作品のテーマであることが分かる。

また、邦時との蹴鞠シーンが、矢をかわす様子に繋がっている。

「対極の運命」という煽りは、作者の脚色であると思うけど、今まで漫画やドラマの題材となってなかった史実の切り口として光る。

45・46ページ目。

諏訪頼重により、主人公の行き先、勝つまでのロードマップが語られる。私は歴史に疎いので、諏訪頼重の歴史的立ち回りの史実は知らないけど、楽しめる。

今後、活躍しそうな仲間キャラも1カット描かれる。少年少女っぽい感じだけど、薙刀の少女は男の娘の可能性ありそう。

47・48ページ目。

諏訪頼重が、主人公を救い出そうという本当の動機は後に語られる。後の話が気になる要素、伏線の一つ。

主人公の涙は、読者の「応援」の感情につながる。

49・50ページ目。

二年後を予感させて、第一話終了。ぶっちゃけ、史実であるなら、読者が「北条時行」と検索すれば、物語のラストというのは、モロバレするので、「震撼」などと表現しつつ、出し惜しみしない感じある。

ラストページに、巫女の雫が描かれない部分に、この作品はショタコンに向けた作品であると、作者からのメッセージを感じる(愚か)。

総評:企画倒れ。

思ったほど、「最高の1話術!」というのを拾えなかったので、漫画読むのが得意な人は、同じことやってみてください。感じたことをまとめてみると…。

  1. これまでのジャンプ漫画の中では新しい「逃げる」というテーマ選択。
  2. 北条時行という有名でない歴史上の人物のピックアップ。
  3. 8歳という年齢設定と、主人公の環境の激変により、読者の「応援」という気持ちを刺激させる。最近のジャンプトレンドと読者の中年化の延長線上に登場した主人公と言えるかもしれない。
  4. 歴史もんというハードルの高さを埋める努力。
  5. 諏訪頼重がギャグ要素満載で、シリアス一辺倒にしない。
  6. 英雄とまで呼ばれる、魅力的なラスボスの登場と、主人公の特性との対比。
  7. 「2年後」という物語の終着点と、諏訪頼重のロードマップにより、物語迷子の可能性を減らし、「どう終わるか」というのは、ジャンプ読者の安心感につながる。

暗殺教室が殺せんせーの未知なる正体に近づいていく物語だとするなら、「逃げ上手の若君」は、検索すればネタバレしちゃう史実だから、1話の描き方が違うのかもしれない。

また、魔人探偵脳噛ネウロも、暗殺教室も、テコ入れなしで作者の予定通りに連載を終了させたという逸話があるので、逃げ上手の若君も、最終回から逆算された1話なんじゃないかと思います。

分析するならば、暗殺教室の方が連載1話術が多いのじゃないか?と思ったりもしましたが、逃げ上手の若君、楽しみです。月曜日の楽しみが増しました。ましまし。

関連記事。

そもそもアンケート的にライバル作品が減るのを待ってから、新連載が始動したのじゃないか?という邪推もあり、そのあたりのことを以下の記事で書いてました。

yarukimedesu.hatenablog.com

多分、「逃げ上手」を打ち切るに追い込むほどの人気作品は、そうそうは出てこないと思います。