大学院卒ニート、しやわせになりたい。

働かないで、アフィリエイトとか、ユーチューバーで幸せになりたいです。

スポンサーリンク

安倍晋三総理笑っていいとも!出演記念小説・右目小僧の街。

思いつきで行動するってのもよくないでさあね。特に趣味もないもんで、夜勤明けの急な休日を持て余しがちだった私は、ちょっとした冒険みたいなものを始めてみたんですよ。まぁ、やることは単純で、最寄りの駅から、適当な駅まで鈍行で乗ってって、乗り換え、乗り換え、乗り換えを3回。適当な街で降りるんですね。そして、その街を観光する。ただ、それだけって話なんです。

その日についた街は、駅の名前が烏だか鶏だか、そんな名前だったんで美味しい焼き鳥で一杯飲めたらななんてことを昼間っから考えてたんですが、別に焼き鳥が有名って訳じゃあなくて、駅前の商店街は普通に食堂やら、薬局やらなんやらかんやらありましたね。街の匂いってのがあって、例えば、酒造の街なら酒臭かったり、後、温泉街なら硫黄臭かったり、漬物の匂いだったり、キムチとか、中華料理の匂いがしたり。日本って国は、外の国から来たら、糠臭いって言うらしいですね。まあ、この街はごくごく平凡な街で、駅前の建物を立て替えているとかで、しいていうなら土埃、コンクリ臭かったですかね。まぁ、降りといてあれですが、私の最寄り駅と何ら変わりない、平凡な街ですよ。

でもまぁ。駅前の、何て言うんですかね、プール?タクシープール?ロータリー?名前は分かりませんが、Uの字、Oの字になってるところに、バス乗り場だとか、タクシーが停まってるんで、それなりに観光もできるのだろうと期待して、バス停なんて何も分かりませんから、へいタクシーってなもんでタクシーに乗り込んだんですね。どこか、おすすめの観光地はないかいなってな具合で。そしたら、運ちゃんの奴がね、言うんですよ。

「そしたら、旦那。右目小僧の街なんてどうですかい。」

なんて言いやがる。バカ、誰が旦那だこら、こちとら、すっぴんぴんの独身でいってもんで、まぁ、そんな細かいことは言わないですが、右目小僧なんて言葉は聞いたことがないので、なんだいそいつは、何か妖怪の類かい?もしくは、土地の有名人とかそんなのかい?今流行のゆるキャラなのかい?なんつって聞いてみた訳なんですよ。

「いや、有名人とかゆるキャラじゃあないですね。普通の街です。」

とそんな返事。なんで普通の街をおすすめするのか根掘り葉掘りと聞いてみると、住んでいる住人が右目小僧だって言うじゃないですか。妖怪か?と聞いてみると、妖怪じゃないと言う。もう、なんだからちがあかないんで、ちょうど、昼頃だったんで、どっかで飯を食べれるとこはないのかって聞いたんですよ。

「ちょうど、右目小僧の街に美味い焼き鳥屋がありますよ。」

なんて話で。聞くことは決まってますよね。昼から飲めるってんで、右目小僧の街にレッツドン。そんな訳で、焼き鳥串焼き飲みにやってきた訳ですね。まあ、主たる目的は観光なんで、焼き鳥と、飯があったら飯と、地酒なんてあったら軽く入れてこうって算段ですよ。

「はい、ここから右目小僧の街ね。」

なんて運ちゃん言うものだから、窓の外を見てみるけど、特に何も変わらない。歩く人の顔を見てみても、ちょっと流行遅れの化粧髪型ってくらいなもんで、なんら変わらない。何が右目小僧なのかは分からんままですが、まあ、着けば分かるだろう。飯食えたらそれでいいやってくらいなもんで、タクシーを降りたんですね。

嬉しいことに私の好きなものは全部ある。こりゃ、昼から夕方までここで飲んでいいかな?いいとも!なんて思いながら、地酒はなかったですが、麦焼酎なんかを注文したりして、店員さん、女将さん怪訝な顔をするかな?と思ったんですが、常連のジジイ、ババアが、インスタントラーメンみたいなのを肴にもう出来上がっている。こりゃ、慣れたもんですねと。私も、焼き鳥定食を肴に麦焼酎をちびちびぐびりとやってたんですね。

ちょいと、女将さんがジロジロみてるような感じがして、こんな辺鄙な田舎町。外から来た人間が珍しいのかな?と、ちょっとしたアバンチュールを想像しちゃったりなんかしている頃でしたね。

「あんた、左目小僧の人だね。これ、お新香。サービス。」

なんつって女将さん、お新香をテーブルにポンと置いて奥に下がっちゃった。左目小僧?俺がぁ?そこで思い出したんですが、この街は右目小僧の街。なるほど、右目の小僧さんから見たら、おいらは左目かな?なんて思って、でも、特になんてことなしに、今度はお新香を肴に、ちびびちぐびりとやってたんですよ。そしたらね。

「やあ、この街に左目小僧さんとは珍しい。一緒にいいですか。」

なんて、好青年っぽいのが隣にやってくる。ああいいですよってんで。でも、旅は道連れ、世は情け。せめて、自己紹介の交換でもどうですかいって話を聞いてみたら、なんてことない、この焼き鳥屋の倅だったって話で。今は、大学生。地元のっつっても、バスで一時間くらい行ったこれまた辺鄙な大学の3年生。なんだい、その大学も右目小僧ばっかなのかいと聞いてみると、半々くらいと答えが帰ってくる。なんだか分からねえな。右目小僧ってのは、この街の者だけなのかいって。

「まあ、全国にいるみたいですけど、集まって住んでいるのはこの街だけですね。」

なんて、清々しく答える。若いってのはいいもんですね。右目と言わず両目が綺麗に輝いている。なるほどこれはいい機会だ。こっちは、もう中年と呼ばれる身分。ちったあ、仕事の役に立つっつうか、何かの刺激になるんじゃあないかと、右目小僧さんの話を色々と聞いてみた訳なんですね。

「なんだ、左目小僧さんも、そんなに変わらないんですね。」

なんて、逆にこっちの話をしちまったくらいで。俺は、左目小僧じゃあないっつうのに、そりゃ、右目小僧のあんたから見たら左目小僧かもしれないけど、おいらは、生まれてこのかた両目小僧だと思って生きてきたよって、そんな話ですよ。

「じゃあ、左目小僧さんから見たら、右目小僧なんてのは片目小僧かもしれませんね。」

と、要領を得ない。片目、かため、固め、なんつって、この店の自慢の乾麺のラーメンなんかをしめで頼んだりして、なかなか、よい気分、きがついたらすっかり夕方になっていた訳ですね。まぁ、たまの休日、若いのと一緒に飲めたのも良い感じかな、と。左目、じゃなくて、右目小僧さんにお別れ言って、そして、帰ろうと思ったんですね。

「明日の笑っていいとも楽しみですね。祝日で良かったですよ。」

なんて話で。大学生なんざ、平日休日祝日関係なしに休めるだろうよいって思ったんですが、なんだかんだで、右目小僧からしたら左目小僧の私も、明日のいいともは楽しみなんで、右目小僧の街ってのは一体何だったのかな?と思いながら、電車に揺られて帰ってきた訳なんですね。帰ったら、明日の弁当は何にしようかな、なんて考えながら屁をこいて寝るばかりで。独身ってのは、寂しいもんですね。でも、今日はそこそこ楽しかった日だったんですよ。