大学院卒ニート、しやわせになりたい。

働かないで、アフィリエイトとか、ユーチューバーで幸せになりたいです。

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「おやっさん、ラーメンの味、落ちたんじゃないの?」「え?」

「おやっさん、ラーメンの味、落ちたんじゃないの?」

「え?」

やっさんは、私が脱サラをしてラーメン屋を始めた時からの仲で、歳もそんなに変わらないのに私のことを「おやっさん」と呼び親しんでくれている。そして、週に一度、決まって土曜日にラーメンセットA、汁濃い目、ネギ多めを注文する。土曜日に仕事が入った時は、振替で日曜日に食べに来る。そして、いつも「美味いねぇ」と言って、満足げに帰っていく。

そのやっさんから「味が落ちた」と言われた。そんなに突飛なラーメンを作っている訳じゃあない。もちろん、夏場、冬場、温度などで味が変わることはある。作っている側も人間だ。同じ味を出そうとしても誤差はでる。だから、毎週食べにくる「やっさん」は「今日は濃いね」とか、「塩が強いかな?」とか言っていた。

だが「味が落ちた」とは言われたことはなかった。もしかしたら。自分でも気付かないうちに、腕が落ちてしまったのだろうか?気になったので、やっさんとは違う常連の客に聞いてみたが、期待した答えは返ってこなかった。なぜか、私は「不味い」という答えを期待していたのかも知れない。

もしも、世の中に絶対的なラーメンの美味さを判定する機械があったなら。料理人としては考えてはいけないことだが、もんもんと考えている中で、ふと過ぎった考えがあった。もしも、人の味覚も老化により衰えて行くなら…。私の味見の能力が低下したとするなら、もしかしたら、やっさんの方の味わう能力も…。

そこまで考えて、それ以上、考えるのはやめた。次の土曜日にやっさんが来たら、色々と聞いてみよう。何が答えかは分からなくても、何かが変わるかも知れない。次の土曜日が待ち遠しい。不安と、期待と…寝る前にやっさんのことを考えていることに気付き、苦笑した。


「おやっさん、今日はBセットにするわ。」

「お、おう…。」

後から聞いたが、先週の日曜日の早朝にやっさんの初孫が生まれたらしい。色々とつっこみたかったが、お祝いにサービスで唐揚げをつけといた。Bセットは50円ほど安い。