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【パチスロ異能小説】スロット軍団長、打ち子の一人の寿命半分を死神に捧げて設定の見える目で勝ちまくりわろた。

「全てのパチスロの設定が見える目が欲しいのか?それには、お前の寿命の残りの半分が必要だが、それでも欲しいのか?」

目の前にいるのは、自称死神のスロッカスと名乗る背中に漆黒の羽のある全身が漆黒の大男。容姿がデスノートに出てくるリュークと完全に一致しているし、死神というのは間違いないだろう。

「半分というのは、何歳の、どんなヤツでも半分なのか?」

「ああそうだ。それが時の総理大臣であれ、持病があったとしても、何歳でも残りの寿命の半分だ。」

人選に偏りは感じるが、スロッカスは個人名は言ってない。

「じゃあ、ジジイの方が減る寿命は少ないからお得ということか?」

「それは、考え方次第だな。太く長く生きたいなら、若い頃に取り引きした方が楽しいんじゃないか?」

「なるほど……。」

目の前にいる死神を前にして考え込む俺は、パチスロで食っている。いわゆる軍団というものを率いている。軍団とは、報酬を払って、打ち子(軍団員)にパチスロを打たせることで、多くの利益を生み出す集団である。その取りまとめ役が軍団長だ。

パチスロを知らないヤツは、個人で勝つだけじゃなくて、団体で勝つというのは難しいのじゃないか?と思うかもしれないが、世の中には「全台系」とか「全456」とか、パチスロで勝たせる日ってのが存在する。そんな時に、人数を用意できれば、勝つ可能性と、勝つ金額を増やすことができる。

手元に、8月21日のユニバース本店のファンキージャグラー全9台のデータがある。全9台で、終日のトータル差枚数はプラス1万枚であった。半456くらいの状況だろうか。その島を9人の身内で埋めることができれば、つまりは、約18万円くらいの売上となる。日給1万円支払ったとしても、9万円残る。

もちろんこれは、良すぎる例であるのだが、人数を集めることができれば、ソロで動き回るよりも勝てる日、店というのがあるし、実際に、俺はそれで稼いできた。そして、本当に設定が見える目があれば、より確実に勝つことができるのは、明白である。

「じゃあ、その死神の目を頂こうか。」

「そうかそうか。じゃあ、寿命の半分を頂くぞ。」

「良いぜ。ただし、こいつのな。」

俺のすぐ隣で、ぶるぶると震えていた青瓢箪(あおびょうたん)のような小男を引っ張り出す。年齢は40歳。いわゆるオワコン人生と言えるような男だ。こいつにも、スロッカスの姿が見えているようだ。

「ん?そいつが、死神の目を身につけるのか?本人が同意しないと、異能は渡せないのだがな。」

「なーに、こいつは人生に絶望してるんすよ。パチスロで稼ぎたいっつって、打ち子に加えたんですけどね。当日に、違う台に座ったり、ジャグラーでペカっても3ベットしたり、使えないヤツなんですわ。だから、ちょっとでも軍団の役に立ちたいってことで、設定が見える目があるんなら、皆のために欲しいって言うんんですよ。俺は、そんな目なくても勝てるって言ってるんですけど、本人が言って聞かないんですよ。な、そうだろ?」

「……。」

オワコン小男は、冷房もきいている俺の部屋で、対して暑くもないのに汗をかいて、手を硬く握って、ぶるぶる震えている。怪しまれるだろ。お前には、寿命半分捧げるくらいしか、能がないだろうが。「断ったら殺す」と、目で小男に伝える。小男は、非常にぎこちなく頷いた。それくらいの動作、自然にやれ。

「そうかそうか。じゃあ、そっちのヤツに死神の目を授けよう。」

スロッカスが、そう言うと……スロッカスが立てた指から、光の輪ができた。そして、その輪は、小男の目の中に吸い込まれていった。これにより、死神の目が授けられたらしい。

「では、さらばだ。何か用があるなら、駄菓子のイカフライを窓際に置くんだぞ。」

スロッカスが飛び去ってから、俺と小男は、ユニバース本店に向かった。夜も20時を回っていたから、高設定挙動の台以外は空き台になっていたが、小男を連れて、バジリスク絆2とジャグラーの島を観察する。声を出すと店員に怪しまれるから、指でサインを出させる。設定4ならグー、設定5ならパー、設定6ならチョキという具合に。特に稼働する予定はなかったが、マイジャグラーⅢの島に眠っていたパーの台に座り、回してみる。閉店までの時間で、どれくらい回せるか分からないが、死神の目の真偽を推し量る意味もあった。

俺がジャグラーを小突いている間に、小男には、ジャグラーと絆2の島、新台や、一応バラエティー島を観察させた。契約していない古いガラケーを持たせて、機種名、台番号、設定の順番でメモさせる。数値などをメモする場合、ガラケーの方が操作性に優れている。それが終わったら、設定パーのジャグラーを打たせる。チェリー狙いすらおぼつかないが、寿命を半分捧げさしたし、多目にみてやる。俺は、マイジャグラーⅢの見える位置の休憩場所に座って、ガラケーに打ち込まれたデータを確認する。

なるほど。普段からデータ取りで予想していた通りとも言える。旧イベ日ではない平日に、ジャグラーに入っている最高設定は5。バジリスク絆2にも、全18台中に4が2台ほど入っていて、ベースの設定は2であると。予想している通りだが、答え合わせができるのと、朝一番から確実にツモることができる。系列店のユニバースⅢには、年間通じて最高設定は4だと踏んでいるが、そのあたりをハッキリさせることもできる。4しかないのであれば、人を集めてまで狙う必要性はなくなる。56があるなら、少人数で攻めることもできる。

様々な戦略を考えながら、小男がマイジャグⅢを回す様子を見ていた。20時半から、1500G程度しか回せなかったが、ブドウ、合算ともに悪くなく、1200枚程度浮いた。換金を済ませて、小男に3万円握らせる。1万円よりも、出玉よりも多い金額に小男は驚いていたが、俺が同時に考えるべきことは、こいつを逃さないことである。人を支配するには、恐怖と金が一番だ。こいつには、異能を持つ自分を中心にした軍団を作るような胆力はないけど、逃亡されたり、反抗されたりすると、面倒なことになる。

まあ、こいつが後何年で死ぬのかは分からないけど、次に死神の目を身につけるヤツを見つけるのも面倒だ。10年なら10年、20年なら20年で、稼げるだけ稼ぎまくったら、一生分稼げるかもしれないし、死神の目には、そのポテンシャルがある。そうなると、なるべくパチスロに無知な団員を集める必要がある。異常なツモ率を勘ぐられたら面倒だ。また、他のパチスロ生活者のグループとの関係も気をつけないと行けない。死神の目という武器は手に入れた。後は、それをいかに使い、立ち回るかを考えないといけない。これまでも打ち子を雇って稼いできたが、全知全能の神になったかのような、全能感が俺を包み込んだ。勝てる、勝てる、勝てる。

次の日から、小男を連れ立って、様々な店の調査を始めた。旧イベ日じゃあなくても、456のある店。競争率のわりには高設定の後ヅモができる店。今まで、データ的に推測していたことの答え合わせを行っていく。そして、打ち子の手配や、全体での当日の立ち回りを模索していく。設定という答えが分かっても、そこに絶対に着席できるわけではない。当日、増台機種とか、平均設定の高い島を打ち子で埋めつつ、状況を見つつ、人を移動させる。

朝イチは狙いの機種を打ち子で埋める。小男に設定を確認させてからでは、間に合わない。その後、狙った機種の中で、仮に打ち子が低設定に座ったとしても、1Gも回さないで離席するのは不自然だろう。ある程度、判別ができるぐらいには回させて、その時に、他の島に高設定台が空いていれば、移動させた。あまりに派手に稼ぎまくると、店側から目をつけられるから、軍団人数は死神の目を手に入れる前よりも、少なくするようにした。

死神の目を持つ小男が重要なパーツではあるが、どんくさいヤツだから、何度も「殺すぞ」と思ったが、怒りは抑えつつ、設定を見てまわらせていた。台番号と設定をガラケーに打ち込むだけの簡単なお仕事だけど、度々、ミスをするから、死神の目がなかったら、マジで殺すレヴェル。

全く使えないヤツではあるが、設定が見える目を手放すわけにはいかないので、他の打ち子には見えないところで、多くの金を手渡したし、飯や酒も奢ったし、風俗にも連れてって行ってやった。こんなヤツにも、承認欲求はあるのか、少し照れた感じで、「ふひひ」と笑っていた。マジで殺そうかと思った。


事件は起きた。まあ、事件を起こしたのは俺なのだが、こいつが死神の目を持っていることを忘れて、気がついたら、ボコボコに殴った後だった。人を支配するのは、金と暴力。最近、暴力を行使してなかったのもあるが、少々のミスは許してきたが、朝イチのツモれた台も、移動先の台も、全部一台ずつずらしてメモってやがった。ジャグラーは設定示唆演出は出ないし、絆2は、設定示唆演出は出るけど、出ないなら数値だけの設定判別は難しい。というより、設定が分かった上で回してるんだから、少々凹んでもブン回すわな。大損害。全員が設定456の横の設定1の台をぶん回して、気付いた時点で10人で1万5000枚、30万のマイナス。殺してもいいよね?もちろん、流石に挙動が怪しいから再確認させたら、メモを間違えたと、ブルブル震えながらどもりながら言いやがったし、なんなら、間違ったことを気付いてから一時間くらい黙ってたらしい。殺しても良いよね?間違いに気付いた後は、高設定の空き台に全員を移動させて、少しはマイナスを補填したが、その日は、日当を支払ったら、結局、35万の赤字になった。なめてんじゃねーぞ。殺してもいいよね?

ボッコボコに殴った。

小男は、すみませんすみませんと殴られながら土下座をして、何度も誤ったし、土は涙と涎と血でぐちゃぐちゃになったけど、地面に倒れ込んで土下座したら、起き上がらせて、何度も殴った。勘弁してくれよ。パチスロの軍団長なんて、身体鍛えてないし、人だって殴り慣れてないんだからさ。殴った俺の拳は、皮が剥けだしたし、骨が痛んだが、殴っている間にアドレナリンが出たのだと思う。拳から発せられる熱が心地よい。血と涙と涎と汗が土に混じって出来た泥は、ヘドロのように汚かった。嗅いだら臭いんだろうな。嗅がないけど。

病院に行かれると面倒だから、薬局で消毒液とか、大きい絆創膏を買った。それを吹き付けたり、貼ったりして、治療してやった。そして、殴ったことを謝った。謝ったふりをした。人を支配するのは、暴力と優しい言葉。「ごめんな」と言いながら、同時に、設定メモのミスのことを諭した。諭すような話し方をした。怪我の治療する偽りの優しさが伝わったのか、小男は「うん、うん」と言いながら、涙を流した。少しの間、パチスロ稼働は休みにした。

とは言え、小男を休ませる間にも稼働は続けないといけないわけで、死神の目を手に入れる前の、打ち子を使った普通の軍団活動に戻った。もちろん、稼ぐことは出来るのだが、稼ぎは少ない。死神の目がチートであることを再確認する。小男を大切に扱う……とかは考えたくはないが、死神の目を失ってはいけない。もしも、あの日に、俺が殴り殺していたら、それがアイツの寿命だった……ということになるのだろうか?とか、考えた。

小男を呼び戻し、設定をメモるだけの簡単なお仕事でも、ガラケーを受け取った後に、小男と一緒に確認して、ダブルチェック、打ち始める前にもう一度チェックして、トリプルチェックをするようにした。まあ、普通の仕事ならチェックを挟むことは普通のことなのかもしれないが、パチスロ軍団長も、打ち子も普通の仕事なんてしたことない。

また、小男との見せ掛けの信頼関係を気付くために、打ち子に配る軍資金の管理を一部任せたり、共犯(?)意識を植え付けるために、軍資金の札束が詰まった沢山の封筒を見せてやったりしたし、絶対に文句が出ないくらいの分前も与えた。軍団で動く時は、設定完全看破が終わったら、小男は6に座らせて、その出玉は全部小男の取り分としてやった。

が、小男の仕事の覚えないっぷり、ミスの多さは……なんてったっけ、アルファベット4文字系の何かなんじゃないかと思うけど、だからこそ、死神の目を受け入れたのかもしれない。絶望してないと、スロッカスは見えないらしい。もちろん、俺にも見えているから、俺も絶望しているわけだ。死神の目で、一生分稼げたとしても、俺がスロッカスを見えなくなるかは分からないが、多分、見えるのじゃないかと思う。

小男撲殺未遂から3年。相変わらず小男は、メモだけの簡単なお仕事をミスし続けていたが、アルファベット4文字のヤツとも上手に付き合うようになり、軍団の力をフルに活用して、稼ぎに稼ぎまくった。決して出禁にならないように注意しつつ活動していた。打ち子全員が勝たないように調節したり、苦戦しているようにも見せた。そのために、死神の目をあえて使わない日もあった。

インターネット掲示板の爆サイでは、『情報漏洩サクラゴミクズ軍団』なんて揶揄はされていたけど、そんなのは関係ない。店側も、我が軍団を利用していたのじゃないかと思う。店が高設定を使う理由は、単純に言うと射幸心を煽るためであり、入れた高設定が不発で埋もれると、結局として売上は落ちるそうだ。親しく話すようになった、デブメガネ店長が言っていた。

そして、俺の貯金がいよいよ大台に乗ろうとした時に、小男が急に倒れ、隣の市、東西北南丹市の総合病院に入院することになった。俺は身内ではないが、死神の目を失うわけにはいかないので、病院に同行した。精密検査を受けさせると、全ての数値が悪い上に、全ての項目が「要再検査」という悲惨な結果になった。

「いよいよか……。」

俺は、窓際にイカフライを置くことにした。そうすると、置いた瞬間にスロッカスが現れた。はやすぎ。

「あいつの寿命が来たってことなのか?」

「さあな?不摂生して、毎日パチスロしてたから、体調が悪くなったんじゃないか?くくく。」

しらじらしい。取り引きをした時に、小男の残り寿命が何年だったかは分からないが、仮にアイツが60で死ぬと仮定したら、寿命半分を捧げたなら50で死ぬことになる。アイツは、今はたしか44。そろそろ、健康に不安が出てきても、おかしくないはずだ。仮に生きていたとしても、寝たきりになってしまえば、死神の目がなければ意味がない。病院のベッドで寝込んでいたら、パチスロの筐体を見ることができないからだ。

「死神の目を取り引きしたい。」

「お?いいのか?さらに残りの寿命から半分寿命を貰うことになるぞ?」

「あの小男からじゃない。死神の目を、軍団のために欲しいってヤツがいるんだ。」

「ほう?誰だ?俺のことが見えないヤツは、死神の目も無理だぞ?」

死神から異能を授かることができるのは、死神を見れる絶望しているヤツだけ。打ち子で生計を立ててるヤツらなんて、全員絶望している気がするが、次の目候補を選ぶために、軍団をユニバースⅢの休憩室に集めてある。道々、スロッカスに事情を説明しながらユニバースⅢに向かうことにした。

スロッカスが一人で休憩室に入り、打ち子の一人と一緒に出てきた。やはり、アイツだったか。前々から、次の目候補にあたりをつけて、精神的に追い込んでおいたのが、功を奏したようだ。店から出ると、すぐにタバコに火をつけて、ブルブル震えながら、俺の方に近づいてきた。

「な?言った通りだろ?稼いで行くためには、死神の目が必要なんだ。協力してくれるよな?な?」

小男を脅迫した時と同じように、目に「殺すぞ」を込める。ブルブル震えながら、やはり、ぎごちなく頷いた。スロッカスの指から光の輪が飛び出して、瞳の中に吸い込まれた。

「くくく。これで残り寿命が半分だ。あと、何年生きられるのかな?」

「そういうことは分からないのか?」

「分かるけど、教えてやんない。」

ブルブルと震えて、タバコが指からこぼれ落ちた。死神の目が、ちゃんと効果するかを確かめるために、ユニバースⅢを目と一緒に回ったが、やはり絆2は全台1だったし、ジャグラーの島にも4しかなかったし、そういう台は埋まっていた。

仕方がないから、他の打ち子達には小遣いを渡して、その日は解散にした。俺は、新たな目を連れて、ユニバース本店で、目の力の確認と、いくばくかの稼働をすることにした。車に乗り込む前に、スロッカスが言う。

「一つ教えておいてやろう。寿命というと、お前ら人間は、健康寿命のようなモノをイメージするが、実際のところは、運命のようなモノなんだ。つまり、事故死する運命なら、そこが寿命ってことだな。」

「何が言いたい?」

「まあ、運転には気をつけろって話だ。くくく。」

その話を聞いて、新たな死神の目は、さらにブルブルと震えだした。

「こいつは、事故で死ぬってことか?」

「そうは言っていない。くくく。」

なんだか煮え切らない感じだが、もしも、こいつが事故死する運命なら、寿命が尽きる日に同乗してたら巻き添えくらう可能性があるな。まあ、寿命を捧げた当日に、そんな運命がやってくることはないだろう。しかし、気にかけておく必要はあるかもしれないな。言うことを言ったら、スロッカスは飛び去り、俺と目は、ユニバース本店を目指した。



今日も目が覚めると、自分の部屋とは違う天井がそこにあり、自分が入院していることを思い出した。次に思い浮かぶのは、パチスロ。マイジャグラーⅢのゴーゴーランプ。自分の人生って何なんだったんだろうか?と思う。怠惰と惰性で生きてきた結果、パチスロで稼いだことしか残らなかった。しかし、あんな事故が起きるだなんて、想像だにしなかった。

入院中、体調も徐々によくなり、ずっと寝ているのも暇なので、ロビーでテレビを見ていた。そうすると、パチンコ屋のユニバース本店で多重事故が起きた結果、一人の男が死んだらしい。駐車場に車を止め、運転席から出ようとした時に、つんのめって飛び出した先に、駐車場に入ってきた自動車に跳ねられ、飛んだ先で、ちょうど発進しようとしていた軽トラに跳ねられ、道路に飛び出し、さらにトラックに跳ねられた先で、ゴミ収集車に突っ込んだ。即死だった。全身の骨が全部折れていたらしい。その男の名前は、ヨシトミと言った。僕に死神の目の能力を押し付けたパチスロ軍団長だった。

自分の寿命が何年残っているかは分からないが、そもそも年下だったヨシトミが先に死ぬなんて思いもよらなかった。自分はどうしたらいいんだろうか。軍団を作らなくても、死神の目があれば、自分一人で生きる分くらいは稼げそうだが。もう寿命を捧げたのだから、使わない方がもったいなくも思えるが……。

丁度、その日の昼ごはんの献立にアジフライがあったから、皿ごと病院の窓際に置いてみた。そしたら、ちょっと間を置いて、死神が現れた。

「イカフライっつってんだろ。」

珍しくキレたような口調で現れたが、指でつまんでアジフライを食べて、「うまっ!」と目を輝かせていた。自分の今後の相談もしたかったが、ヨシトミのことを聞いてみた。

「くくく。あいつか、死神の目を2回も取り引きしたんだから、寿命が半分の半分になって、あの日に、寿命が尽きたんだろうな。くくく。」

耳を疑った。死神の目を手に入れたのは、僕だ。2回というのが意味が分からないが、声が上手く出ないけど「どうして?」と訴えかけた。

「まあ、お前の目を使って一番稼いでいたのはアイツだったしな。ほとんど使わなかったけど、お前の次の目も、同じことになるのが目に見えてたから、2回ともアイツから寿命を頂いた。残り寿命の半分の半分にしては、早すぎる気もするがな。」

死神の言葉が本当なら、僕の寿命は減ってないということなのだろうか。

「もしかしたら、俺が寿命が貰った以外にも、ホールの呪いとか、他の神からの干渉があったのかもしれないな。くくく。しらんけど。」

スロッカスに対して、自分の言葉で色々と話しかけたいけど、心に思ったことが上手く、口が動かない。子どもの頃からそうだった。それでいじめられたし、どんどんと自信がスポイルされていった。

「ああ、無理して話そうとしなくていい。心くらい読める。俺は神だからな。まあ、お前じゃなくて、あいつから寿命をとっていたり、色々と文句とツッコミがあるんじゃないかと思うが、一言で言うとな……アイツ、面白くねえんだもん!ぜんっぜんっ!つまらん!」

デスノートでは見たこと無いような表情でスロッカスは続ける。

「仮に1日6000円で計算しても、45年分くらいは稼いでたみたいだし、まあ、死んでも文句ねえんじゃねーの?」

言うことを言ったら、スロッカスはスッキリした顔をしていた。

「で?死神の目はどうする?使い続けるなら、今からお前の寿命を半分もらうし、いらないなら返してくれても良い。ただし、返事なしにパチスロの筐体を見た時は、死神の目は使うものとして寿命の半分は頂くからな?」

心の中で「少し、考えさせて欲しい」と念じると、それはスロッカスに通じたらしい。

「用がある時は、窓際にイカフライかアジフライを捧げるんだぞ。唐揚げとかでもいいぞ。」

スロッカスは、飛び去った。さて、どうしようか。死神の目があれば、今後、金に困ることはない。ヨシトミからの軍団の給料で、貯金は1000万くらいは貯まっていたから、人生を再スタートするには、十分な資金はあるように思える。

午後の問診の時に、お医者に筆談で、ヨシトミの葬式に行きたいことを伝えた。健康もほぼ回復しているらしく、付添人をつけることを条件に、許可してくれた。

葬式に行って、何度か挨拶した気はするが、ヨシトミの両親や兄弟、家族と、お葬式の場で、親しくなる必要がある。子供部屋おじさんではないが、ヨシトミは、実家暮らしだったし、母屋を自分の部屋として使っていた。両親は、ヨシトミの部屋の天袋に軍団資金の現金が保管されていることを知っているだろうか?

お葬式が終わったら、彼の友人として、彼の部屋に上がらせてもらう。思い出とか、形見の話になるかもしれない。そして、天袋の中の軍資金の有無、金額を確認してから、死神の目を返すか、返さないかを考えよう。パチスロで稼いだ金だから、親兄弟が把握してないなら、急に消えても何も問題ないだろう。

相変わらず、自分の心の声が、上手く外に発する言葉にならないが、ぐんぐんと勇気がわいてきた。はやく、はやく、お葬式に行きたい。窓の外を見ると、光が溢れていた。死神の指から出た光の輪が、自分の目に飛び込んできた時の光とは違い、心が前向きになる光だった。

おしらせ。

パチスロ異能小説もアイデアが完全に尽きたので、しばらくお休みです。ほんとうです。