ジャグラーとは、ノーマルタイプのパチスロである。ノーマルタイプとは、ボーナスのみで出玉を増やすゲーム性で、ジャグラーの場合は約300枚増えるビッグボーナスと、約100枚増えるレギュラーボーナスが搭載されている。ボーナスに当選すると、筐体のGOGOランプが光るが、一般的にそれは「ペカる」と言われ、ボーナスに当選したことを意味する。
パチスロには、最大で6段階の設定が機能としてつけられており、それはパチンコ店の設定担当者が決める。ジャグラーの場合は6段階であり、出玉に一番関わるボーナスに大きな設定差が儲けられている。
以下は、ジャグラーの1機種であるマイジャグラー4のそれぞれの設定のビッグボーナス、レギュラーボーナス、合算の数値である。
設定:ビッグボーナス:レギュラーボーナス:合算の順番での表記している。
1:1/287.4:1/431.2:1/172.5
2:1/282.5:1/364.1:1/159.1
3:1/273.1:1/341.3:1/151.7
4:1/264.3:1/292.6:1/138.9
5:1/252.1:1/277.7:1/132.1
6:1/240.9:1/240.9:1/120.5
これ以外にも、7枚払い出しのあるブドウや、2枚払い出しのあるチェリーにも設定差が設けられている。
ジャグラーという機種は、設定示唆演出や設定確定演出が存在しないために、当日のグラフや合算などの数値を見て、勝負する人が多い。
極めて単純に考えると、2000G遊戯されている台が2台並んでいて、合算が1/200の台と、1/130の台があるなら後者を選んだ方が高設定である確率は高いし、合算だけじゃなく、より設定差が大きいレギュラーボーナスを多く引けている方が、高設定の可能性は高まる。
世の中の設定判別アプリの大半は、当日の数値から数学的処理を経て、設定を推測しているが、単純に合算の良い台を座った方が勝つ確率は高まるはずである。
ただ、目の前に数値やグラフが用意された時に、「設定1でも合算が1/172.5であるなら、それよりも悪い合算は少なくとも設定1に近づくはずである」とか、「グラフ凹んだ台は、その後にハネ上がる」とか、逆に「グラフが急上昇したグラフは、その後に凹む」など、様々な考えが生まれる。それらの思考もホールの呪いを形成する一部であるが、一般的にオカルトとか波理論と呼ばれるもので、パチスロで勝つためには、廃除しなければならない思考である。
私がパチスロ生活者、パチスロユーチューバーになる前に、通っていた店、ユニバースⅢに久しぶりに行ったら、心の中で「貧乏神」と呼んでいた男が、変わらずをパチスロをしており、その立ち回りは変わってなかった。思わず「何も成長していない」という名台詞が思い浮かんだが、私はスラムダンクを読んでいない。
貧乏神は、合算の悪いジャグラー、合算が1/180を下回る台を選んで打っている。典型的な波理論信者であると思われるが、ジャグラー以外の立ち回りを見ていても、もしも設定が見える異能があるなら、全部設定1と思われる島、台を打っていることが多い。圧倒的に勝って帰るときよりも、負けて帰ることの方が多くなる立ち回りをしているし、一週間で10万円くらい負けているのじゃないだろうか。
ただ、私が異能を手に入れる前には気づかなかったことだが、貧乏神の背中には黒いモヤがかかっていた。もしかしたら、デスノートのリュークと容姿が完全に一致した死神・スロッカスが実在しているように、私が貧乏神と呼ぶ男は、本物の貧乏神なのじゃないか?と思えてきた。
そこんところ確認したく、久しぶりに帰った実家のAスロット偽物語のある子供部屋で、窓際にイカフライを置いて、リュークを呼び出そうと思ったら、イカフライの袋が窓際に着地する前に現れた。はやすぎ。
「久しぶりだな。もっと寿命を捧げて、神捲り300枚動画を作ってくれていいんだぞ?くくく。」
「相変わらずだな、スロッカス。また動画がだれて来たら、寿命を捧げるよ。」
「今日は、なんのようだ。新しい異能が欲しくなったのか?」
「いや、聞きたいことがあってだな……。」
貧乏神のことを、どう説明したものか?と思ったが、自分が心の中で貧乏神と呼んでいる男のことを話した。
「ああ、アイツか。牛飼ってるような顔のヤツだろ?実際に、牛を飼ってるんだ。」
牛に関しては答えないでおいた。スロッカスの言葉には、畜産業への侮蔑的表現が含まれているようにも思えるが、それは私の考えではないし、この文章を書いているヤツの考えでもないし、スロッカスは死神だから倫理観が少し崩壊しているという表現だと思ってほしい。
貧乏神の人間としての(?)名前は、ヤギと言うらしい。いや、ヤギは普通の人間なのだが。
「背中に黒いモヤがかかっていたが、ヤギも何かの異能を持っているのか?」
「いや、あのモヤは、呪いだ。」
「呪い?」
スロッカスから「寿命を1日捧げると、1日の勝ち金額が6000円になる」という異能をもらった私だが、呪いに関しては聞かされてなかった。だとしたら、ヤギがかかっている呪いは、パチスロに勝てなくなる呪いであろうか?
「あるいは、呪いではなく、パチスロに勝てなくなる異能であろうか。くくく。」
どっちやねん。そのあたりのことをスロッカスに聞いてみると、ヤギという男は、ホールの呪いにより寿命が蝕まれているらしい。ホールの呪いとは、パチンコ業界に向けられた怨嗟や、長年の憎悪や悲劇、侮蔑的表現、自粛警察、はてなブックマークなどの負の感情が、積み重なったものであり、その呪いが向けられると、健康診断の結果が全て「要再検査」となる。つまりは、死が近づく。
ヤギは、若い頃にパチスロ生活をしていた。実家の畜産業を手伝わず、市内にあるユニバース系列のパチンコ店を根城にしていた。私はまだ、パチンコ・パチスロに触れてなかった頃だが、入店時に人が殺到して誰かが転んだら、転んだヤツは後から来たヤツに踏みしめられ、台争いで殴り合いがおきて、設定6確定台で20万円負けたヤツがパチスロ筐体を殴り壊したり、店員がパンチパーマだったり、荒々しい時代があったらしい。
インターネットにいるおじんが、パチンコ業界に強いヘイトを発しているのは、その頃の印象だけが強いのかもしれない。しらんけど。
ヤギが若い頃にやっていた立ち回りは、軍団である。軍団とはグループを組んでパチスロをする行為であり、ただちに否定されるモノではないが、朝イチに足の早いヤツが大量のタバコを持って走り回り、札台(今は禁止されているが、当時は店側が高設定示唆の店内装飾をしていたらしい)を全部キープしたり、負け込んだ老人に罵声を浴びせたり、コンプライアンス意識の低かった当時としても、ひどかったらしく、結果として、同業者(?)から恨みをかい襲撃をうけることになる。頭から流血し、肋骨も折れる怪我を負った上に、ホールの呪いも受け、寿命が蝕まれることとなったらしい。それが今から15年ほど前。
その話を聞いて、自業自得だ……とは思わないが、ホールの呪いというものが存在しているなら、自分は背負わないように注意しなければと思った。スロッカスが言うには、「パチスロを愛しているお前は大丈夫だ」とのことらしい。
ホールの呪いにより、余命幾ばくもなくなったヤギがスロッカスに望んだ異能は「寿命が伸びる能力」だった。パチスロと全く関係ない。
「人間の1日の寿命ってのは、稲田朋美議員であっても、1日6000円だ。寿命を金で買い取っても、売ってやるってことはしてないんだ。」
人選に偏りを感じる。保守系議員の人名にもネタが尽きはじめているらしい。
ヤギの求めに答えることはできないらしい。もしも、寿命が金で買えるなら、私ならいくら払うだろう。スロッカスは、寿命が伸びる異能を与えなかった代わりに、ヤギに呪いをかけた。新たな呪いを上書きすることで、ホールの呪いを無効化したらしい。それが、パチスロに勝てなくなる呪いである。上書きにより健康診断結果から「要再検査」が消え、寿命の蝕みは止まった。
「それは、結果として寿命を売ってやったことじゃないか?」
「まあ、あいつは週に10万くらい負け続けているが、俺がやったのは、あくまで呪いの上書きだ。値段をつけて寿命を売っている訳じゃない。」
「まあ、理屈はどうでもいいか。でも、スロッカスにしては、ずいぶん親切じゃないか。」
「あいつが寿命を伸ばしたい理由ってのが、年老いた母親の面倒をみたいってことだったんだ。俺は、そういうのに弱くてな。」
こいつにも、こんな一面があったのか。襲撃を受けて、入院して、軍団も解散した時に、ヤギのことを見捨てなかったのは、母親だけだったらしい。
ヤギの実家は、ブランド和牛である亀首牛を育てているらしく、ぶっちゃけパチスロで負けるくらい屁でもない収入は得ているらしいが、ヤギの母親を老人ホームに入れるほどの余裕はないらしい。ヤギがパチスロで負けている分を費用にすれば可能なような気がするが、その場合はヤギはホールの呪いで死ぬ。何が幸せかは、ヤギとその母親にしか分からない。
スロッカスは、私にホールの呪いは心配ないと言ったが、知らんヤツの立ち回りを心の中でディスっていたのは、呪いの側に立っているかもしれない。自分から見て、愚かに見える他人の立ち回りも、その背景にあるものは、想像がつかないモノである可能性もあるってことが、スロッカスから聞いた話の教訓であろうか。
昨今のパチスロ事情の話などを雑談して、スロッカスは窓際から飛び立って行った。余談ではあるが、私が寿命で死んだ後、死神界でスロッカスと再会した時に、様々な異能者のその後を聞いた。ヤギは、呪いが上書きされた後、140歳まで生きたらしい。
なーんや、それ。