「職人って言ったら聞こえがいいけどさ。結局、歩合の仕事をしている訳なんよ。だから、ネジ一個仕上げて1000円とか具体的な金額があるとさ。これ買ったらネジ何個分とか、そんなの考えちゃう訳ですよ。」
「なるほどねえ。」
「月給か、せめて日給月給で働いていると、もうちょっと感覚が違うのだろうけどね。」
「まあ、私も牛丼何杯分とかで考えてしまいますね。」
「だからね、消費税上がっても牛丼は値段据え置き、ありがたいよ。消費税上がっても多分、仕事の単価、上がらないしね。」
「そう言って貰えると。」
「でも、仕入れとかも大変なんじゃない?」
「まぁ。3%不味くなりますけどね。」
「え。」
「増税分ね。不味くなりますよ。値段同じだし。」
「それは、材料がちょっと安くなるってこと?仕入れの?」
「いや、仕入れは変わらないですね。そんなに仕入先変えられないですし。」
「じゃあ、調味料とか?」
「調味料も同じです。しばらくは、在庫がありますし。」
「あ、そう。じゃあ、量が減るとか?」
「量も変わらないですね。下手に減らすとお客さん、逃げちゃうんで。」
「えーと、じゃあ、3%不味くなるってのは?」
「まぁ、気持ちの部分ですね。増税分、適当に作っちゃう感じですね。」
「え、そうなの。」
「まあ、仕事の密度を薄くするような。すみません。お値段据え置きなんで勘弁してください。」
「あー、そう。そうなんだ。うん。でも、3%のやる気なんて、そんなに変わらないんでしょ、味には。」
「そうですね。まぁ、3%くらい味は、美味しくなくなるでしょうね。」
「あ、そう。気持ちの部分は頑張ってみないの?」
「まぁ、できないですね。なにせ、毎日の仕事なんで。」
「あー、そう。」
「じゃあ、どうですか?お客さんが3%分期待して食べてくれれば、多分、味は変わらないと思いますけど。」
「やだよ。こっちは、金払って食べるんだから。」
「ですよね。まぁ、3%分の美味しくなさなんてすぐに慣れますよ。」
「そうか、まあ、そうだね。」
「紅生姜は増税後も無料なんで。」
「そいつは嬉しい。」
「廃棄までの時間を3%伸ばしてやりますけどね。」
「だっはっは。そりゃあいい。」