大学院卒ニート、しやわせになりたい。

働かないで、アフィリエイトとか、ユーチューバーで幸せになりたいです。

スポンサーリンク

探究心だらけの桃太郎~8億ブクマプリーズ。

昔々、あるところにお爺さんとお婆さんがいました。あるところとはどこなのか?お爺さんとお婆さんは、自分が住んでいる土地を支配している地主や豪族のことは知っておりましたが、まだ、日本列島がどのような形かは知りませんでした。

お爺さんは山へ柴刈りに、行きました。お爺さんが、主に仕事をしている薪炭林までの道のりには、色々なモノの痕跡がありました。廃屋もありましたし、既に朽ち果てて、石垣だけになったところもありました。お爺さんは、仕事の合間に時々、発掘調査を行い、陶片などを発見して、既に失われた生活に思いを馳せておりました。

お婆さんは川へ洗濯に行きました。川上には何があるのだろうか?川下には海があるそうですが、お婆さんはこれまでの人生で一度も海を見たことがありません。洗濯に行く度に、もう二度と戻ってこれないくらいに歩いていったら、どうなるだろうか?という気持ちが湧き上がります。しかし、洗濯物を洗い、そして家に帰らないとお爺さんが困ってしまいます。そんな生活の中で、河原の石を拾って割ってみたり、川上から流れて来たモノを観察することが、お婆さんの楽しみでした。

ある日、お婆さんが川で洗濯をしていると、大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。お婆さんは、先ず、水温を確かめてから川に入りました。川底は藻でぬかるんでいるのを知っているので、注意しながら歩き、お婆さんは、桃を川から拾い上げ、家に持って帰りました。

「なんと大きな桃じゃ。さっそく、鉈で割ってみよう。」

お爺さんが鉈を振りかざすと、お婆さんは止めました。「本当に鉈がふさわしいのですか?」と。言われてみれば確かに。では、何で桃を割るのが正しいのか?と悩んでいると、桃は自発的にパカっと割れ、中には玉のような男の子がおりました。

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

なんて元気な赤ん坊でしょう。お爺さんとお婆さんは、本当に男の子か否かを調べるために、その感触、大きさ、味などを丹念に調べました。お爺さんとお婆さんは、名前の字画などを詳しく調べた上で、男の子に桃太郎と名前をつけ、桃太郎はすくすくと育ちました。


その日から、お爺さんとお婆さんは日々の仕事の合間に、桃太郎が流れてきた川上のことを調べるようになりました。同じ村の人々に聞いてまわり、川上から来た旅人にも、川下から来た旅人にも、川上のことを聞きました。しかしながら、川の原泉のことを知る人は誰もいませんでした。

川は、険しくて誰も立ち入らない山の麓から流れ出ているとのことでした。地元の猟師や木こり達も、山奥の山奥、原泉までは行ったことがないとのことでした。お爺さんとお婆さんは、使命感のようなものを感じてました。いつか、この子が大きくなった時に、世の中に出ようとするまでに、桃から生まれた桃人間である桃太郎が何者であるのか?桃から人間が生まれた神秘というものを、解明しなければいけない……と思っていたのです。

いや、本当は、それすらも妥当な理由をつけていただけなのかも知れません。あの日、桃が割れて、中から赤ん坊が飛び出してきた時から、二人の頭に焼き付いて離れないのは「知りたい」という気持ちでした。


「お前さんら、本当に旅に出るのけぇ。」
「ああ、もしも戻って来なかったら、この家と裏の畑は好きに使ってくれたらええ。」

桃太郎が生まれてから、五年の月日が流れました。その間、お爺さんとお婆さんは倹約し、長旅の準備と、自分たちが不在の間の田畑の世話を依頼するためのお金を貯めておりました。どんな事情があれ、年貢は納めないといけません。万全を期して、二年分の手間賃を用意しました。もしも、三年目の田植えの時期までに戻ってこれなければ、お爺さんとお婆さんと桃太郎は、お上によって処罰されてしまうでしょう。

「もしも、ダメだと思ったら、絶対に帰ってくるんだよ。絶対だよ。」

徳兵衛さんは、お爺さんとお婆さんにそう言いました。お爺さんは、「もちろんさ」と答えましたが、その心のうちは……。


徳兵衛さんに見送られ、三人は旅に出ました。お爺さんとお婆さんは、使命感に燃え、桃太郎はその旅の意味などを理解してない年頃だったので、きゃっきゃと喜んでました。かつて旅人達が話した山までは三ヶ月くらいで辿り着くことができました。しかし、そこからが本当の難関でした。何しろ、猟師も入らない山奥です。道はもちろん、獣道もない。谷があっても橋もかかってない状態でした。

お爺さんとお婆さんと桃太郎は、山の麓に掘っ立て小屋を建て、そこを拠点に少しずつ原泉を目指すことにしました。一日で進むことのできる距離の半分まで進むと、次の日に備える。川の位置や、地形を確認しながらの作業だったので、まさに日進月歩の日々でした。少しずつ道が繋がると、小屋を山奥に移しました。当初は、必要な食料などは村里まで出て買っておりましたが、次第に、周囲の山々で食料を調達できるようになりました。

もうこのまま川の源泉まで……と思いましたが、冬になり、その寒さは、子供の桃太郎には耐えられるものではないので、仕方なく春になるまでは村里で過ごすこととなりました。


「あんたさんがたは、一体、何をするつもりで?」

麓の村の茂吉さんに尋ねられました。まさか、桃太郎の生まれた場所を調べている……とは答えられなかったので、自分達は、猟師の夫婦だと説明しました。「猟師なのに鉄砲の一つも持ってねぇ。おかしなもんだやな」と茂吉さんは笑ってましたが、それ以上は聞いてくることはありませんでした。寒い冬でしたが、人の暖かさに触れることができました。

お爺さんとお婆さんと桃太郎は、冬の間、茂吉さんの家に下宿させて貰いながら、冬仕事を手伝い。同時に、村の伝承なども聞いてまわりました。村や、その周りの地域には、物語は色々あれど「山奥には鬼がいる」、「近づいてはならない」などの共通点がありました。茂吉さんに聞いてみると、みんな迷信だと思っているが、山奥の険しさから、無理に立ち入ろうとする者は、ほとんどない……とのことでした。


春になり、茂吉さんにお礼を言って、お爺さんとお婆さんと桃太郎は、また山奥での生活に戻りました。ただただ、川上を目指す日々。お爺さんは、川には橋をかけ、切り立った崖には、梯や縄をかけます。お婆さんは、食料を集めたり、川で洗濯をしておりました。桃太郎は、草花や虫と遊びながら、お婆さんの仕事を手伝っておりました。お爺さんは、切りっ立った崖に少しずつ足場を作っていきました。この崖が最後であれ……そう念じながら、少しずつ道を作っていきます。

二度目の冬を目前にした晩秋の頃、お爺さんは、ついに川の源流に辿り着きました。いや、正確には、それが源流だとは分からないのですが、川が流れだす大きな筒のようなものを発見したのです。周囲の自然と比べると明らかに異質な筒。お爺さんは、この場所に近づけないための意志のようなものを感じました。それが何かは分かりません。森の奥は、食べ物も豊かで、人が入らない理由は分かりません。しかし、今は、その筒の方が気になります。

お爺さんは、お婆さんと桃太郎を崖の上まで呼び寄せて、その日の晩は筒の前で寝ることにしました。

「明日は、あの中に入るぞ。」

お爺さんは、焚き火に枯れ枝をくべながらお婆さんにいいました。筒の横には洞窟のようなものがあります。

「ええ。朝一番に入りましょう。」
「ああ。」
「できれば、何も起きないで、お昼には三人で戻ってこれるのを信じて。」
「ああ。」

明日の昼ごろには、三人の運命は変わってしまっているかも知れない。お爺さんとお婆さんは、そう予感しておりました。桃太郎は、ただ、すやすやと寝ておりました。


洞窟の中は異質でした。外の光が入らなくなった辺りでお爺さんは松明を燃やしましたが、足元は、まるで冬の氷のようにツルツルとしていて、ひんやりとしていました。真ん中には、あの筒が奥へ奥へと伸びていました。

「これは、石か……。」

山奥にあると思えない異質な洞窟。いや、それは誰かの家なのかも知れない。松明を決して落とさないよう、ぎゅっと握りしめ、お爺さんとお婆さんと桃太郎は、通路を進んでいきました。半刻ほど進んだ頃でしょうか。通路の先に光が見えてきました。これは、山の反対側かどこかに出たのかも知れない。お爺さんは、そう思いました。

「うわぁ……。」
「あぁ……。」

お爺さんとお婆さんは思わず声を上げました。声を上げるしかできなかったのです。その風景は、今まで二人が見てきたモノのどれにも当てはまらないものでした。お婆さんは、まだ娘だった頃に、川遊びをしていて、澄んだ水に潜って水面を見上げた時のことを思い出しました。

そこは、山の反対側ではありませんでした。そこは一つの部屋でした。天井を見上げると、水面のようにゆらゆらとしていて、降り注ぐ光は太陽の光なのか、別の光なのか、お爺さんとお婆さんには分かりませんでした。周囲を見やると、桃の樹が生えておりました。しかし、その大きさは今まで見た樹のどれよりも大きいので、本当に樹かどうかは分かりませんでした。また、もう秋の暮れだというのに、見事な花が咲いていました。また、あの筒は樹の傍まで伸びて、樹の元には泉があり、その水を洞窟の外へと運んでいるようでした。

樹の傍には、箪笥のようなモノと、煙管台のようなモノがありました。ふらふらとそれに近づいてみますが、何かは分かりません。煙管台には、特に仕掛けはないようです。もしかしたら、前にある箪笥のようなモノを使う時に据わる腰掛け台なのかも知れません。

箪笥のようなモノ。お爺さんとお婆さんが知っているモノで一番近いものは箪笥だったのですが、その大きさは大きく、大中小と三つ並んでおり、一番小さいモノでもお爺さんの背丈を超えていました。一番、大きな箪笥からは筒や管のようなモノが伸びて、桃の樹の根本に刺さっていました。お爺さんが、一番小さな箪笥をあれこれと調べていると、ふいにぱかりと天板が開きました。そこには、拍子木のような、組み木細工のような大きさの揃った黒と白の細い板がずらっと並んでました。

お爺さんが、恐る恐る一つに触れてみると、押すと沈む仕掛けのようで、一番押してみると「ぼん」と音がしました。また別の場所を押してみると「ぽん」と音がしました。詳しく仕組みは分かりませんが、これは、太鼓や三味線のような楽器なのじゃないか、と思いました。お婆さんも触ってみると、今度は「ぽん」と高い音がしました。桃太郎は、楽しくなったのか、煙管台のようなモノに登り、むちゃくちゃに板を押してみました。ぽん、ぼん、べん、ぼん、ぽん、ぽん……と色々な音が流れます。あまり、乱暴に扱うと壊れる……と思い、お爺さんが桃太郎を後ろから抱っこして止めました。すると……。

「あう、てう、すう、じあ……。」

と、どこからか声のようなモノがしました。それは、目の前の箪笥から出たようですが、先ほどまでの楽器のような音とは違います。やがて、機織り機を動かしたような、とんとん、かんかんという音や、水車を回して粉を引いた時のような、ドンドンという音が加わり、最後は、お湯が沸いた時のような、ぶしゅうという音がしました。お爺さんと、お婆さんは、何かが起こる……とさっと身構えました。

音が止むと、しばらく静寂が続きました。お爺さんとお婆さんが、周囲の様子を探っていると、桃の樹の花の一つがぱたぱたと動き始め、むくむくと実がなり、そして、ぽちゃりと泉に落ちました。お爺さんとお婆さんが泉に近寄ってみると、桃は筒に吸い込まれて、見えなくなりました。桃太郎は、お爺さんが抱っこから下ろしてくれたので、また、煙管台に登り、板を叩き出しました。

「あう、てう、すう、じあ……。」

落ちた桃は、また筒の中に入って行きました。


「お爺さん、お婆さん。僕は鬼退治に行きます。」

お爺さんと、お婆さんと桃太郎が、村に戻ってから数年後に、大きくなった桃太郎は言いました。お爺さんとお婆さんは、あの不思議な場所から持ち帰った武具と、不思議な団子を桃太郎に渡しました。今、都を荒らしている鬼の正体が気になるお爺さんとお婆さんでしたが、それは、息子の桃太郎にたくすことにしました。あの日、自分達が川に流した桃は三つ。その桃は、川下でどうなったのだろうか。桃太郎が、答えを持って帰ってきてくれるのかも知れません。また、桃太郎の桃を流したのは誰だったのか……お爺さんとお婆さんは、ふうと息をして、息子の旅立ちの朝に備えて、眠ることにしました。昔々のお話です。

オマージュ元。

銃夢(Gunnm)Last Order (1) (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)